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AIは本当に仕事を奪うのか?

Would AI really steal our jobs?

2017.07.24

Updated by Mayumi Tanimoto on July 24, 2017, 13:00 pm JST

AIが仕事を奪うという話がここ数年話題です。

確かに、トレーディングや単純なデータ分析、定形質問などへの回答は自動化可能なのでAIに置き換わると思うのですが、しかし、その一方で膨大な仕事が発生するという側面もあるるわけですね。

例えば消費者の保険商品に対する質問をAIに答えさせる場合。どういう質問が来るかを「想定」するのは人間ですし、どの質問に対して何を紐つけるか、どんな回答をインプットするかを決めるのも人間じゃないとできませんし、コンピューターは入力した回答を吐き出すだけなので、回答の入力という仕事も発生します。

AIを使ったシステムを設計、開発するのも人間です。その前にユーザーから聞き取りして、要件定義して、予算調整して、UIも考えて、開発の後はテストもして、その後運用とアップデートも必要になるので、実は機会化すればするほど仕事が増えるんじゃないか?と思ったりします。でもそれは、対面で人に回答する仕事じゃなくって、インシデントへの対応だったり、質問の入力だったり、質問言語の分析だったりになるんでしょうけども。

以前ロンドンのインペリアル・カレッジのAI研究者の方と話した時にいっていたのは、AIを導入しようとすればするほど仕事が増えて困ってる、ということでした。

この方は病変の画像診断をAIにやらせるという研究をやっているのですが、まずAIには画像や病気の名前を入力しなければなりません。入力する前に「この画像は病気」「この画像は違う」と判断する作業が発生しますが、経験のある医師や医療系専門家が判断しなければなりません。

選んだ画像をどううやって、いくつぐらい読み込ませるかも人間の仕事です。さらに追加のデータもどんどん発生するので、それを入力していく人も必要で、そういう作業が膨大なので、かなりの人手が必要だというのです。

それに一旦システムを作っても、更改も発生するので、やっぱり仕事が増えていくというのが想像できるわけですね。消える仕事もあるんでしょうけど、増えていく仕事もある。

ビッグデータをAIに判断させるにしても同じで、データの質をみるのは人間ですし、収集のコーディネーションするのも、仮説をたてるのも、データの相関を決めるのも、結果を解釈するのも人間なので、ビッグデータとAIを入れれば入れるほど増えていく仕事もあるわけですね。

80年代にPCが職場に導入された時も、2000年頃にWebが一般的になった時にも、人間の仕事は減って、将来楽になるとか何とかいわれていましたけど、今の実態は反対で、スマホやSNSなんてものも登場して返って仕事が増えてますし、予約や購入が楽になったので、LCCやAirbnbやメルカリみたいな商売が生まれて仕事が増えるし、個人で物を売買する人も出てきていますね。30年前には想像できなかったことです。

先日、80年代まではタイピストをやっていたというイギリスのご老人と話をしていたのですけども、タイピストの仕事がなくなった後には、事務やら受付やら色々な仕事をしてきて、今は悠々自適の引退生活をしています。

炭鉱夫だったご主人は炭鉱がなくなった後は製造業に転職して今は引退です。あの最悪な不況だったイギリスでさえ何とかなっていたわけですから、AIと仕事の未来に関してはもうちょっと楽観的になってもいいのではないか、という気がします。

ただ稼げる職種は限られて来るので早めに動く必要はあると思いますが。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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