original image: © Netfalls - Fotolia.com
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NHKが不用意に「ダークネット」という用語を受け売りしたため、今後、この言葉は、違法な薬物や武器、個人情報などが取り引きされる闇のネットという意味で使われるようになるかも知れない。
例えばダークファイバーというのは、事業者が敷設だけしていて使っていない光ファイバー回線のこと。使う時には中を光の信号が行き交うため光るからライトファイバーで、使わないと光らないからダークファイバーという。
ダークネットは、元々、2011年に枯渇したとされるIPアドレス(IPv4)のうち、配布されていながら実際にはホストが割り当てられていないアドレス、つまり使われていないアドレス群を指す言葉だった。
このアドレスに向けてパケットが送信されてもどこにも届かないことになるが、実際には通信が目的ではなく、サイバー攻撃やマルウェアの伝染のためにこうした無効なパケットがインターネットを飛び交っている。これらの無駄なパケットのトラフィックの分析をセキュリティー向上に役立てる研究も行われているのだが、薬物や武器、個人情報の売買の方が視聴者には分かりやすいのかもしれない。今後、ダークネットという言葉は、そちらの意味になってしまうのかも知れない。
NHKがダークネットと呼んだものは、これまでは「ダークウェブ」と呼ばれてきた。つまり、ダークなのはネットワークではなくてウェブサイトなのだ。ネットには繋がっているが、特別なソフトウェアを持った関係者以外はアクセスできないウェブサイトであり、Googleなどの検索エンジンのクローラーの探索対象外となってしまう。クローラーが行けない闇のウェブなのだ。
クローラーが行けないという意味では、企業など法人内のネットワークもインターネットに接続されてはいるが、外部からのアクセスを厳しく制限しており、検索できないが、こちらはディープウェブと呼んで区別している。
8月末、38歳のフランス人、Gal Valleriusがアメリカで逮捕された。テキサス州オースチンで開催される世界ヒゲ選手権に出場しようとしていたらしい。記事の写真を見ると、確かに立派なヒゲを蓄えている。
彼は、OxyMonsterというネット名でDream Marketというダークウェブを運営していた。ダークウェブの大物の一人としてアメリカの捜査当局がかなり前から目を付けていたらしい。
Dream Marketにアクセスするには、まず通信経路を秘匿するTor(The Onion Router)を内蔵したブラウザ、Tor Browser、及び、より通信の秘匿性を高めるためにVPN(Virtual Private Network)が必要となる。VPNを介して、TorブラウザでDream MarketのURLにアクセスし、ログイン名とパスワードを登録する。もし、薬物や個人情報などを購入するのであれば、ビットコインが必要となるという。
「ダークネット、あるいはダークウェブの存在に対する認識が薄いから、東京オリンピックに向けて日本企業はもっと警戒すべきだ」というのがNHKの言い分のようだが、ダークウェブで企業の機密情報が取り引きされることと企業の秘密が漏洩することは別の話である。
ダークウェブが存在しようとしなかろうと、企業も個人も情報管理に細心の注意を払い、漏洩対策を十分に講じる必要があることは当然のことであるし、違法な物の売買に加担したり、購入したりすれば犯罪であることも言うまでもない。
【参照情報】
・Supplemental data: Estimating Internet address space usage through passive measurements
・Buying From The Dream Market
・On his way to beard-growing finals, he gets busted for drug dealing on the ‘dark web’
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