イスラエル南部の砂漠地帯ネゲブ(撮影:新井 均)
イスラエル南部の砂漠地帯ネゲブ(撮影:新井 均)
イスラエル南部の砂漠地帯ネゲブの町「ミツペ・ラモン」(標高800メートル)に、テクニオン(イスラエル工科大学)建築学部の学生たちが「D-MARS」という名の施設を建設した。目的は、火星での生活のシミュレーションである。ネゲヴ・ベン=グリオン大学とテクニオンの共同プロジェクトで、D-MARSは、Desert Mars Analog Ramon Stationの頭文字。
2月下旬からこの施設で、6から8名の男女ボランティアが数週間、暮らすことになっている。宇宙で実施することになるのと同じようなタスクを実行し、主に心理面に与える影響を調べる。イスラエル宇宙局の支援を受けてのプロジェクトだ。
施設は、実際の宇宙基地がそうなるであろうと同じように、やや狭い。ベッドは日本人には馴染みの深いカプセルホテルのような作りになっている。施設から外に出るには、宇宙服を身に着ける必要がある。地上でのミッションと無関係の人とはコンタクトできない。
宇宙では投資効率を最大化するために、最少の要員で可能な限り多くの実験を実施することが求められる。砂漠の模擬基地でも同様に多くのタスクが与えられる。また、宇宙船のメンテナンスや修理といったスキルも必要で、実際の作業も行う。映画「オデッセイ」では、火星で農作物(ジャガイモ)の栽培が行われたが、この実験施設では食べ物は、宇宙船で運んで行けそうなものに限定される。こうした生活の中で発生する課題や問題を発見し、解決方法を確立しておくことが目的である。
ミツペ・ラモンが選ばれたのは、地形や地質、乾燥の度合い、他の地域からの隔絶などの点で火星に近いと判断されたからである。とはいえ、火星ではマイナス140℃にも達するという寒さはシミュレートできないし、呼吸できる大気もある。
米航空宇宙局(NASA)は、ハワイの火山で1年間の火星移住計画シミュレーション実験を2015年から行った(米NASA、火星環境の模擬実験を完了 隔離生活1年間)。NASAの場合は、実際に火星に人類が移住することに備えての準備として行われたが、イスラエルの実験は、教育や研究のために設計されているという。ただし、宇宙飛行士の養成施設は限られており、将来的には実際に役立つ施設となることも期待されている。
ちなみに、アポロ月着陸計画が進められていた20世紀にも、月面にあるクレーターでのサンプル採取作業を想定して、ネバダ州フラグスタッフにある「メテオ・クレーター」でトレーニングが行われた。
【参照情報】
・Team builds habitat to simulate life on Mars
・Israelis On ‘Mars': Astronauts To Simulate Life On Red Planet In Desert Habitat
・Israeli venture simulates Mars in Mitzpe Ramon
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