第7回を迎えたITACHIBA会議。今回のテーマは「10年後を生き抜くためのIT営業のキャリアを考える」
営業活動は“改良型”ではなく“改善型”“改革型”で行け〜第7回ITACHIBA会議から
2018.02.26
Updated by Takeo Inoue on February 26, 2018, 12:00 pm JST
第7回を迎えたITACHIBA会議。今回のテーマは「10年後を生き抜くためのIT営業のキャリアを考える」
2018.02.26
Updated by Takeo Inoue on February 26, 2018, 12:00 pm JST
先ごろ開催された「第7回ITACHIBA会議」において話された「10年後を生き抜くためのIT営業のキャリア」についての知恵をお届けします。目まぐるしいビジネス環境の変化に対し、IT業界の営業マンはどう対応すべきなのか?会議では、アシスト社長室長の新本幸司氏がメンター役を務めた。
▼アシスト 社長室長 新本幸司氏
新本氏が在籍するアシストは、日本型経営を重視したビル・トッテン氏がユニークな経営を実践した企業として知られている。新本氏は技術職、営業部長、SFA & CRM事業責任者、コンサルタントなどを経て、営業副統括、事業部長、執行役員を歴任し、現在は社長室長として活躍中だ。同氏は、このITACHIBAのほかにも、社外活動として「明日の経営・ITを考える会」や「次世代リーダ育成リレー講座」も開催している。
今回、同氏は、前半のセッションで「過去から現在へ〜営業で変わったこと、変わらないこと」という論題で、時代と営業活動の変遷を説明した。
いまの50代社員が入社した当時はバブルの真っ盛りだ。この世代の多くが「成功体験」を持っている。また、40代社員も先輩の成功譚を聞いたり、少なからずの「成功体験」を知っている世代だ。しかし、30代の社員は“失われた20年”と呼ばれる冬の時代を経てきた世代で、まったく「成功体験」を知らない。つまり「成功体験」という点について世代間の認識格差がある。
▼1980年代から現在に至るまでの日本社会の変遷。今の50代社員はバブルを経験しているが、40代からは厳しい冬の時代に入り、最近になってようやく緩やかな回復期に。
一方、業務環境の変化に目を転じてみる。ICT環境は、メインフレームからクライアント/サーバ、Webシステム、クラウドへ移ってきた。案件あたりの製品単価ははっきりと低下傾向をたどっている。営業環境もだいぶ変化している。かつては業績さえ伴うのであれば自由奔放に営業できていたが、現在では、PHP、PC/メール、共有ツール、携帯電話、SFAなど、さまざまなツールに付き合わずにはおられず、徐々に個人裁量が狭まってきている。つまり、管理や締めつけが厳しい時代になっている。
▼ICT環境の変化もめまぐるしい。メインフレーム時代はソフトウェアだけで数千万円という案件も普通だったが、いまは案件あたりの単価が下がり、営業活動の負担も増えた。
この間の劇的な変化により、GoogleやAmazonなどの新興企業が登場し、最近では、リアル企業とバーチャル企業がその役割を入れ替えるような例もみられる。同氏は、Googleが3200億円で買収し、米国で成功したサーモスタットメーカーのNestの事例を挙げた。
「この企業は単にサーモスタットを売るわけではない。これを使って空調を自動制御したり、家庭の電力量を計測している。やがてGoogleは、電力会社を興すだろうと囁かれている。そうなるとバーチャル企業が一夜にしてリアル企業になる可能性もある。GEは逆にIoT技術を利用し、航空機レンタルを始めようとしている」(新本氏)。
スイッチスマイルのように、観光バスにビーコンを取り付け、動くビーコンでの集客促進や観光情報をインバウンド向けに配信するなど、あらたな送客ビジネスも急伸中だ。いずれにせよ、これからの時代は、データドリブン型の社会を支えるインフラが求められるようになるものと予想される。
▼バーチャルからリアルな企業に変身したり、あるいは逆にリアルからバーチャルな企業に転身する可能性も。さらに新しいビジネスモデルによるパラダイムシフトが起きるだろう。
このような激しい変化のなか、営業スタイルは変わらざるをえない。従来の営業は、顧客発掘から獲得、顧客満足度の向上、その継続まで、というすべてを回すのが顧客関係構築のサイクルだった。しかし、このご時世、従来のような改良プロセスを組み込んだPDCAの発想は通用しないというのが、新本氏の考えだ。
▼これからは改良型PDCAの発想は通用せず、改善型や改革型が求められる。ただし、誤ったアプローチをとると大失敗に終わるリスクもあるため、本質を見抜く力が必要。
「これからは改善型や改革型が求められる。植物栽培に例えれば、改善型というのは添え木をするようなもの。一方、改革型というのは最初から異なるアプローチで水耕栽培するようなイメージだ。しかし、誤ったアプローチをとると大失敗に終わるリスクもある」とし、90年代後半に上陸した当時のSFA(Sales Force Automation)の事例を挙げた。
もともとSFAは、製造業の自動化の概念を営業プロセスに応用したソリューションだ。米国では営業職というのは個人事業主である場合が多く、その限りでは部分最適化のアプローチは理に適っていたが、当時の日本では営業職は終身雇用の従業員であった。つまり事情も異なっていた。改革型としてのSFAは、まだ日本の営業スタイルとマッチしておらず、いち早く飛びついた企業は大やけどを負った
氏は言う。「そういう意味でモノゴトの本質を見る目は重要だ。いまも昔もIT営業の役割は普遍的だ。まずは顧客を熟知すること。特に外から見えないインフォーマルな情報と課題を見つけ、それを解決する。マインド面では顧客目線が重要だ。しかし営業職に誇りを持てないと、入社3年以内に辞めてしまう人も多い」。
▼普遍的なIT営業の役割は3つ挙げられる。まずは顧客を熟知すること。そして課題を見つけて、それを解決する。さらに顧客目線のアプローチも大切だ。
では、10年後を生き抜くために、営業職はどうすべきなのか? 同氏は「環境変化に追従する準備」「ベテラン営業の人脈の引き継ぎ」「人脈を活かす術」「顧客との対等な関係」という点を見直すようにアドバイスした。
(次回に続く)
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登録はこちら東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、株式会社アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにIT、ネットワーク、エンタープライズ、ロボット分野を中心に、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書は「災害とロボット」(オーム社)、「キカイはどこまで人の代わりができるか?」(SBクリエイティブ)などがある。