画像はイメージです original image: © barmalini - Fotolia.com
自動運転の世界的なR&D拠点への第一歩、イスラエルの「スマートモビリティーセンター」
2018.03.27
Updated by Hitoshi Arai on March 27, 2018, 13:51 pm JST
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2018.03.27
Updated by Hitoshi Arai on March 27, 2018, 13:51 pm JST
2017年10月にイスラエル運輸・道路安全大臣であるイスラエル・カッツ(Yisrael Katz)氏が石井国土交通大臣を訪問、「交通分野における協力覚書」に署名をした。
・【平成29年10月26日】イスラエル国カッツ運輸・道路安全大臣による石井大臣への表敬及び交通分野における協力覚書の締結
イスラエルの交通プロジェクトに対して日本企業の積極的な参加を期待する、まさにトップセールスである。大臣の来日時にフォーブス・ジャパンが行ったインタビューが、同誌の1月号に「イスラエル大臣が激白!『自動運転No.1へのシナリオ』」というタイトルで掲載されている。この記事の中で興味をひいたのが、カッツ大臣の以下のコメントだ。
「国内外の企業がイスラエルでR&Dを行うような、世界的な潮流が生まれている。自動運転車両の通行を認めるハイウエイを併設したスマートモビリティーセンターを建設しているのも、それを加速するための取り組みの一つだ」。
この「スマートモビリティーセンター」について調べてみたところ、2017年7月のニュース記事があった。
・Autonomous Car Tech Already Built Into New Israeli Highways, Ministry Says
記事によれば、1号線と531号線に建設された新区間には、より多様な状況・環境での自律走行を可能にするため「車両が自車の位置を認識できる」「車両間の距離、相対速度が分かる」「先行する交通量などを把握できる」といった情報システム、通信インフラを設置するという。「センサー、ソフトウエア、半導体」が自動運転の三要素であるが、これは車側の構成要素であるだけでなく、より高精度な制御のためには道路インフラ側での対応も必要になるだろう。
では、実際にどんな道路が作られているのだろうか? 2018年1月にイスラエルに出張した際に現地を見てきた。
場所は、Googleマップの図に赤丸で示した、531号線とAyalon Highwayが合流する地点である。
イスラエルでは、どこも慢性的な交通渋滞に悩まされるが、特に東西に走る道路(奇数番号)の渋滞がひどい。その渋滞緩和のために、この531号線の車線を増強する工事が行われ、その一環としてこのようなスマートインフラが設置された。
現地の写真が下記の2枚である。この道路はまだ一般車両には公開されていないが、すでに米ゼネラルモーターズ(GM)や独フォルクスワーゲン(VW)などが対価を払ってここで実験をしているという。
渋滞解消を目的として建設した道路に自動運転のためのインフラ設備も組み込み、それを「スマートモビリティーセンター」と称して世界の企業に貸し出す。この発想の柔軟さ、戦略的な思考は、イノベーションの「エコシステム」を作り出すことに長けたイスラエルならではだろう。
多少の先行投資であっても、世界の企業に貸し出すことで投資の一部を回収し、そこが実証実験の場となって世界中から関連する企業が集まり、そこにイノベーションが生まれ、さらなる投資を呼び込むというサイクルである。
実際、イスラエルには、世界中から自動運転に関する研究開発企業が集まっている。中でも有名なのは、2017年8月にインテルに約150億ドル(約1兆6500億円!)という巨額で買収された、画像認識半導体をコアとした運転支援システムを提供する「モービルアイ」だろう(イスラエルが自動車産業のイノベーション拠点に)。2018年3月には、韓国の現代自動車、独VW、日産などが開発拠点を設けることも報じられた(イスラエルが車開発拠点に 現代自・VW・日産)。
自動運転分野では、センサー、ソフトウエア、半導体を中心として、画像認識やセキュリティなどの技術が組み込まれる。これらは、イスラエルが最も得意とする分野でもある。日本のほぼすべての自動車関連企業もイスラエルを訪問し、優位性のある技術を持つ企業との提携を模索しているといわれている。
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登録はこちらNTT武蔵野電気通信研究所にて液晶デバイス関連の研究開発業務に従事後、外資系メーカー、新規参入通信事業者のマネジメントを歴任し、2007年ネクシム・コミュニケーションズ株式会社代表取締役に就任。2014年にネクシムの株式譲渡後、海外(主にイスラエル)企業の日本市場進出を支援するコンサル業務を開始。MITスローンスクール卒業。日本イスラエル親善協会ビジネス交流委員。E-mail: hitoshi.arai@alum.mit.edu