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EUのAI政策に関わる専門家発表される

EU announced High-Level Expert Group on AI

2018.06.28

Updated by Mayumi Tanimoto on 6月 28, 2018, 09:12 am JST

EUがAI政策を検討する委員会に参加する専門家を公表したことが話題になっています。

High-Level Expert Group on Artificial Intelligence (AI HLG)という委員会では 、EU の AI に対する政策戦略を取りまとめ、業界からの意見を取りまとめます。

また単にハイレベルの政策戦略を決めるだけではく、EUの AI 関連のプロジェクトにおけるステアリンググループ(steering group)としてピアレビュー(多方面からの評価)を行う点が重要です。

このグループの目標の詳細は以下となります。

■中長期の AI に関連する課題と機会に関して EU 委員会に対して提言を行い、 政策決定プロセス、法案の評価プロセス、次世代のデジタル戦略の開発に反映する。

■公平性、安全性、透明性、仕事の未来、民主主義そして、プライバシー、個人データの保護、尊厳、消費者保護および非差別を含む人権憲章に対する影響を含むAI の倫理ガイドラインを欧州委員会に提案する

■AI アライアンスにおける幅広い関係者と交流するための啓蒙活動のメカニズムとさらなるエンゲージメントに関して、 EU 委員会を支援し、AI アライアンスとEU 委員会の情報の共有と収集を行う

 

Advise the Commission on next steps addressing AI-related mid to long-term challenges and opportunities through recommendations which will feed into the policy development process, the legislative evaluation process and the development of a next-generation digital strategy.

Propose to the Commission draft AI ethics guidelines, covering issues such as fairness, safety, transparency, the future of work, democracy and more broadly the impact on the application of the Charter of Fundamental Rights, including privacy and personal data protection, dignity, consumer protection and non-discrimination

Support the Commission on further engagement and outreach mechanisms to interact with a broader set of stakeholders in the context of the AI Alliance, share information and gather their input on the group's and the Commission's work.

 

このグループの目標を読むと、単に政策を評価するだけではなく、 AI に関して EU における啓蒙活動や情報の収集、さらに AI だけではなく、より広範なデジタル政策に対する戦略を立案するということがわかります。

また注目すべき点は、雇用、個人情報保護、 AI の倫理を検討するということです。

EUでは、 AI が雇用に及ぼす影響や AI が様々な人間活動に関わることで変化する倫理基準をかなり重く見ているということです。 AI の影響というのは想像以上に重く考えられているということがよくわかります。

日本の中央政府レベルでは、 AI に関する話題が国の重要戦略として語られることはあまりありませんが、 EU のみならず欧州諸国ではデジタル戦略と並行して AI に関するかなり具体的な議論が行われることが普通になっています。 こういった動きから、日本と海外の 主要先進国における AI の温度差が感じられます。

このグループに参加している顔ぶれも大変興味深いものです。以下は参加企業のリストです。

AXA、Bayer、Bosch、BMW、Element AI、Google、IBM、Nokia Bell Labs、Orange、Santander、SAP、Sigfox、STMicroelectronics、Telenor、Zalando

このグループには各企業を代表する専門家が参加しますが、ITだけではなく保険や製薬、自動車メーカーも参加している点に注目すべきでしょう。 AI が実装されるサービスサイドの組織の人々も参加しているわけです。また、大学からの参加者がいないことが 驚くべき点ですが、これは AI の市場の発展というのが企業が中心になっているということが理由でしょう。

特に、製薬や保険会社が参加していることは注目するべきです。 保険の掛け金の計算や医薬品の実効性などの評価に AI が使用された場合、パラメーターの設定によって結果が大きく変わってくるわけですから、どういった倫理基準を基に AI が使用されるかということは真剣に検討されなければいけません。

これは自動車業界にとっても大変重要なことで、 例えば AIを搭載した自動運転車が事故にあった場合、優先するべきなのは、搭乗者と歩行者どちらの命か、ということを判断する必要が出てきます。

何を優先するかは AI のパラメーターの設定によるわけですから、実証にあたっては、倫理基準が徹底的に議論されなければいけません。

また、このグループにおいて注目すべきなのは、メンバーに起業経験者やエンジニアが入っていることでしょう。

Google からはGoogle Brain TeamのAI研究者であるJakob Uszkoreitが参加しています。

日本の政府の委員会に参加する有識者の少なからずは大学の研究者や企業の幹部であることが多く、現場を経験している研究者がインプットを提供するということはあまりありませんので、この人選は参考にするべきなのではないでしょうか。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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