伝統工芸品の魅力を引き出すプロジェクトが今年も――全国から事業者を募集し、ブランド化や海外展開を支援
2018.07.04
Updated by 創生する未来 on July 4, 2018, 12:00 pm JST
2018.07.04
Updated by 創生する未来 on July 4, 2018, 12:00 pm JST
100年以上の伝統を誇る日本の伝統工芸品は、2017年時点で230品目ある。そのクオリティの高さは国内外から高い評価を受けている。しかし、2009年度の経産省調査によれば、生産額は1984年のピーク時から2009年度には4分の1にまで減少しているそうだ。ライフスタイルの多様化や後継者不足、安価な海外製品の輸入など、厳しい現実に直面している。
そのような中で、オールアバウトは2018年5月、伝統工芸品や地域産品をブランディングし、海外展開に向けた活動を支援する「Local Creators’Market 2018」を実施すると発表した。伝統工芸品や地域産品の情報発信とブランディング、海外展開など行うという。
オールアバウトは日本の魅力を海外に発信する情報サイト「All About Japan」を運営している。All About Japanでは、これまで政府などと多岐にわたるプロジェクトを遂行しており、そこで培ったネットワークを生かすとしている。
昨年に続き2回目となる同プロジェクトでは、海外での販路開拓やPRの知見を持つプロデューサーや専門家などが、商品の特性・指向に合わせてチームを編成。事業計画の立案や商品の魅力を伝える動画などを制作し、特設サイトで国内外の情報発信を支援していく。
▼Local Creators’ Market の事業イメージ 出典:Local Creators’ Market
また、国内外で活動する流通業者やバイヤーなどのビジネスマッチングの場も提供。今年度からは、ターゲット市場に合った言語力を有するコミュニケーターの紹介も行うという。
昨年のプロジェクトは、5つの商品を採択している。鎌倉時代から続く刃物の名産地として有名な岐阜県関市では、和包丁を取り上げ海外展開とブランド化を進めた。同市は、オリジナルブランド「和 NAGOMI」を立ち上げ、和包丁の魅力訴求に取り組んでいる。
同市の課題として、ブランド価値の訴求とその他の和包丁との差別化が挙げられていた。そこで、本プロジェクトのプロデューサーは「和 NAGOMI」の多様なラインアップから、海外の生活様式に溶け込みやすいパンナイフとケーキナイフの可能性に着目した。
▼「和 NAGOMI」のパンナイフとケーキナイフ 出典:Local Creators’ Market
プロモーション戦力の立案では、著名パティシエシェフなどにテストマーケティングを依頼、さらに意見交換会の機会を創出した。その結果、同市の刃物の魅力は「切ることの楽しさ」や「持つことの喜び」と価値を定めたという。
このブランドコンセプトを国内外に発信するため、ストーリーブックや動画を制作。越境ECサイト「NIHON ICHIBAN」では、ブランドコンセプトが評価され、欧州での販売契約も策定されるなど、海外展開に向け事業が進められているそうだ。
同プロジェクト以外でも、伝統工芸品のブランド化に成功している事例がある。
伝統工芸の後継者で構成され、京都を中心に活動を行う「GO ON」では、伝統工芸品を核としたさまざまなプロジェクトを実施している。そのひとつ「Japan Handmade」では、海外のデザイナーと連携し、伝統工芸品を海外に広め、新たな市場開拓に取り組んでいる。英語版HPでの紹介、海外の展示会に出店など行い、現地メディアに高い評価を受けたという。実際に、具体的な商談もいくつか動き始め、手ごたえを感じているとのことだ。
厳しい状況に立たされている伝統工芸品だが、そこには高い可能性がまだまだ秘められており、ブランド価値の訴求次第で海外市場開拓も実現できることがうかがえる。
(執筆:高木健太)
おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)
登録はこちら特集「創生する未来」は、同名の一般社団法人「創生する未来」とWirelessWireNews編集部の共同企画です。一般社団法人「創生する未来」の力を借りることで、効果的なIoTの導入事例などもより多くご紹介できるはず、と考えています。