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平等主義の亡霊

Ghost of equality dogma

2018.11.25

Updated by Mayumi Tanimoto on November 25, 2018, 13:22 pm UTC

前回の記事では、カルロス・ゴーン氏の不正の背景には、海外の特権階級は、高い報酬やベネフィットを得ることが自分の地位にとっては当たり前だと考えていることがあるのではないか、と述べました。

こういった感覚は日本ではかなり違和感がありますが、この感覚の違いというのは企業経営や企業自体に大変大きな影響があるものです。

例えば、北米や英国の場合は創業者利益が大きくなっているので、特にテック業界では創業する動機が高くなります。企業が幹部や創業者に対して様々なベネフィットを提供するのも、ごく当たり前のことになっています。

中間管理職や技術者であっても、会社に大きな利益をもたらす人にとっては様々な福利厚生や高い報酬を与えることが当たり前になっています。

そのような仕組みがありますから、世界中からギラギラした感じの優秀な人々が集まってくるわけです。

格差を付けて従業員同士の士気は落ちないのか、ということを疑問に思われる方がいるかも知れませんが、「あいつがもらえるなら俺も頑張ろう」と考える人がかなりいるので、あまり問題にはなりません。

もしくは「彼とは専門も生まれも違うから仕方がない」と最初から諦める人も多いのです。これは特に欧州は、生まれた時点で住む場所や教育に、目に見える形で強烈な格差があるのが根底にある気がしています。

誰も同じではなく、頑張っても有名人のようにはなれない、と考えている人がかなりいるので、日本のように自己啓発本が売れないのでしょう。確かに、書店には日本のように自己啓発本やビジネスのハック本が並んでいません。

ところが日本の場合は、ある意味で平等主義でありますから、幹部や創業者であってもあまりにも高い報酬を与えることはありません。一般の人の反感を買いますので、広報的には逆効果になりますし、従業員の士気も低下します。

企業内部でも、能力の違いによって従業員の報酬に大きな差をつけることはありません。多くの企業では、いまだに年功序列が報酬設計の基本になっています。

一般の人も、「頑張れば有名人のようになれる」「努力すれば起業家の何々さんのようになれる」と思い込んでいるので、書店には自己啓発本や有名企業家によるビジネスハック本が大量に並びます。

現実では、運やタイミング、生まれなどが左右する所が大きく、個人の能力にも実際には大きな差があるわけですが、共産主義的な考え方が世間を支配する日本では、人間は平等だと思い込んでいる人が多いわけです。

共産主義的なドグマと表面的な平等主義によって、組織としてのある意味での安定性は保たれるわけですが、一方では優秀な人を一本釣りすることが難しくなってしまいます。

こういった平等主義が、日本から世界的なテック企業が生まれない原因の一つになってしまっているのではないでしょうか。

社会の安定性や公平性を考えた場合、日本的な平等主義には良いところもあるのですが、経済の活性化を考えた場合は、短所になってしまう部分でもあるわけです。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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