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テック企業幹部の高額報酬とゴーン氏の不正

High earning of tech company executives and Ghosn's misconduct

2018.11.25

Updated by Mayumi Tanimoto on November 25, 2018, 10:05 am JST

ここ最近の日本での最大の経済ニュースの話題は日産のカルロス・ゴーン氏のスキャンダルでありますが、日産のスキャンダルはテック業界の人々にとっても他人事とはいえないと思います。

個人的には、ゴーン氏は単なる外国人経営者ではなく、どちらかというとレバノンの商売人という感覚が強かったのではないか、という気がしています。

ゴーン氏は、ブラジルで育ちフランスで教育を受けたエリートでありますが、レバノン方言のきついアラビア語を話しますので、その思考や行動様式にレバノン的な考え方の影響はかなり大きいのではないかと考えられます。

中東や北アフリカ、南米、さらに欧州は、日本とは比べものにならない階級社会です。階級格差があることが当たり前であり、人々の間の格差というものは日本の感覚では信じられないレベルです。

さらに、中東の多くや北アフリカは部族社会です。利益は部族に還元し、広く公のために使う、という考え方がありません。部族以外の人間は全て敵です。

この様な階級と部族社会的な考え方がある地域では、エリートは自分に与えられた特権を駆使することは当たり前であるという感覚であり、利益は自分の身内や部族に還元するのが当然だと考えます。

特に、叩き上げでそのような地位にたどり着いた人々の場合は「自分はそういった高い能力があるのであるからそれに見合った報酬を得るのが当たり前」と考えています。特権は報酬の一部です。

企業負担の住宅、家族同行の豪華な出張など、欧州ではさほど珍しいことではありません。競馬場に正装で繰り出しロールスロイスで送り迎え、一流デパートのギフト、リゾート地での豪華な会議、豪華なヨットでのパーティーなど、よくある光景です。

日本的な感覚では公私混同ですが、階級社会の上層部というのはそんなものです。

日本の場合は、企業の幹部や官僚とはいっても、ある程度は「仕事は社会貢献や自らを磨くためのもの」と考えており、あくまでサラリーマン的な感覚なので、根本的に考え方が違います。企業お抱えの行事や福利厚生も実に地味です。

このあたりの感覚の違いは、日本企業であっても外国人幹部の報酬が大変高いことを見ればよくわかるのではないでしょうか。

彼らは、自分と末端の社員の格差というものは気にしていません。なぜなら、お互い違う人間なので能力が違って当たり前であり、階級や部族は生まれながらのものなので違って当たり前であり、 報酬や特権に違いが生じるのも当たり前だと考えているからです。

この違いというのは、歴史的な経緯や現地の文化に強く根ざしたものですから、日本的な感覚では悪いことであっても、現地の感覚ではそれは当たり前のことであるとされることもあるわけです。

このあたりの感覚が、例えばテック企業幹部や創業者の高額報酬につながっている気がします。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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