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Brexit後のGDPR対応でAIが活躍

AI to handle post-Brexit GDPR works

2019.02.28

Updated by Mayumi Tanimoto on February 28, 2019, 11:46 am JST

英政府はBrexitの正式な開始をなんとか延長しようとしていますが、「合意なき離脱」となった場合に発生するデータ関連の契約書の見直しや改定は、企業にとっての悪夢になります。

しかしなんとAIが、GDPR対応の救世主になりそうです。

契約書分析のソリューションを提供するSeal Software,がFortune 1000の意思決定者に調査を行ったところ、契約書管理に特化したAIを使用している企業の90%は様々なリスク評価や外注契約の管理に使用し、80%はコンプライアンスや調達に使用しているとの回答を得ました。

また、GDPR関係の契約書には55%が使用し、機密保持契約や調達およびベンダー管理には45%が活用していることがわかりました。

AIが英語圏の大企業でここまで活用されている点が大変驚くべきことですが、英語圏の場合は言語解析のデータの蓄積が豊富であり、20年以上前からAIを想定した自然言語解析が行われてきた上に、法律界はかなり早くから電算化されているので、AIへのインプットが大量にあり、契約書の管理や分析が容易である、という側面があります。

私が学生だった20年前でも、アメリカの田舎の大学で、学部生がLexis-Nexisで様々な判例や法務文書を引き出すことが可能でしたし、私の通っていた大学院のキャンパスでは連邦政府予算で多言語の自然言語解析をやっていたので、数多くの留学生が入力や分析のアルバイトに関わっていました。アメリカを始めとする英語圏のAIの躍進は、こういった長年の蓄積の結果です。

さらにGDPR対応も含め、AIの導入を推進しているのが法務部である、という点が興味深い点です。

契約書の条項をすべてチェックするには大変な手間がかかるので、重要性が低い作業、例えば改定が必要な部分の洗い出しや、保険の約款など定型文を入れる部分はAIを使って見つけ出したり入力します。

私も膨大な量のSLAや内部統制文書、契約書の改定やチェックをやってきましたので、なぜ法務部がAIを入れたがるのか、実によくわかります。業務の少なからずはマイナーな改定であったり、条項のチェックなので、繰り返しも多く、関係部署に該当箇所を提示するだけ、ということもあります。

業務を効率化すれば、法務部やサービス管理、品質管理の担当者は、契約書の内容自体の交渉やスキーム議論など、もっと重要な作業に時間をさけます。

法律事務所や弁護士の仕事もなくなるというわけではなく、アドバイスやインプットは人間がやる必要があります。

AIによって業務が効率化されると、法務部や担当者が新たな体制作りやルールの実装など付加価値の高い仕事に取り組むことが可能になり、法律事務所への依頼がむしろ増える、ということが想定されます。

GDPR対応は頭痛の種でありますが、問題はむしろ改革の機会であり、離脱で痛手を受けるイギリスで大規模な改革が進むかもしれません。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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