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ボリスとトランプの違い

Differences of Boris and Trump

2019.07.26

Updated by Mayumi Tanimoto on July 26, 2019, 12:34 pm UTC

イギリスでは保守党の党首選が終了し、大方の予想通り元ロンドン市長のボリス·ジョンソン氏が次期首相になることが決定しました。

アメリカ発の報道や日本の報道では、ボリスをトランプと同じで極右の親玉、ポピュリストと指摘するものが目立ちますが、イギリスの地元的感覚だとちょっと違うかな、という印象です。

まずはじめに、ボリスとトランプはその生い立ちがかなり違います。

ボリスは政治家家系でリベラル系知識階級の出身です。父方の曾祖父はトルコの革命家であり厳格なイスラム教徒であったアリ・ケマルで、オスマン帝国の最後の内務大臣です。

実はボリスはトルコ系です。

アリの息子のオスマンはイギリス人の祖母に育てられたので、後に祖母の結婚前のジョンソンという名前を名乗るようになります。

オスマンの息子のスタンリー・ジョンソンがボリスの父親ですが、幼少期から学術の才能を発揮し、オクスフォード大学に進学して古典を学び、バイクでインドなどを旅行して旅行記を発表して作家となりました。その後に世界銀行に勤務し、欧州議会の議員になります。

著作や研究を発表するほど環境問題に関心があり、政治的なスタンスはリベラル左派、EU残留派です。

母方の祖先はリトアニアからアメリカに移民してきたユダヤ系で、古文書解読の専門家や芸術家、弁護士などリベラルな文系の人々が多く、政治と芸術系の家系です。母親は画家ですが、後に精神的な問題を抱えたために、ボリスを始めとする子供達はナニーによって育てられます。

トランプの方は、本人も父親も不動産業者で、父方の祖父はドイツから移民してきてゴールドラッシュや不動産事業で財を成した起業家、母親はスコットランドから50ドルだけを手にやってきた貧しい移民でメイドとして働いていました。大変な美貌でトランプの父親と結婚後は社交界で活躍します。

二つ目の違いに、ボリスは文系で学問に興味があるインテリですが、トランプは事業家である、という点が挙げられます。

幼少期からイギリスのエリートが通う私学に通学し、キングス・スカラーシップという奨学金を得て、私学の最高峰であるイートン校に進学しています。

この奨学金は、学力で審査されるもので、学費が免除されるという大変栄誉あるものです。

イートン時代は英語と古典、ディベートで特に才能を発揮し、数々の章を受賞しています。

オクスフォード大学に進学すると、ラテン語と古代ギリシャ語を学びます。通常、イギリスのトップ大学でラテン語や古典を専攻する学生は文系の最優秀層で、頭脳が明晰なのでどんな職業についても成功するといわれています。

学生時から政治に興味があり、保守党系の団体で活動し、後に首相となるデビッド・キャメロンとは、オクスフォード大学では同じ社交クラブに所属していたライバルです。

卒業後は保守系の中流以上が好むThe Daily Telegraph紙で記者となり、古典からの引用や語彙を豊富に使用した単刀直入かつユーモアあふれる記事が人気となり、サッチャー首相のお気に入りの記者となります。

その後、スキャンダルで同紙の姉妹雑誌であるThe Spectatorに移り、政治コラムニストとして人気になり政界に進出します。

一方でトランプは、家に本がまったくないと噂されるほどの勉強嫌いです。Twitterに書く文章も単刀直入で引用や小難しい表現が皆無です。

3点目に挙げられるのは、トランプはテレビの人で、ボリスは紙の人です。

トランプは、アメリカのお茶の間のバラエティやWWE(World Wrestling Entertainment)のような庶民受けするショーアップされたプロレスで大人気キャラになりましたが、ボリスはテレビ出演は多くはなく、あくまで言論の人です。

トランプの支持層はテレビが大好きで、ごく普通のサラリーマンや地方公務員、製造業などで働く主流派アメリカ人です。

ボリスの場合は、一部200円以上するThe Daily Telegraph紙や、The Spectatorの政治コラムを熱心に読んでいるような中流以上の保守層で、今どきわざわざ紙の媒体を買っているタイプです。

ギリシャ語やラテン語からの引用がコラムに登場すると大喜びし、イギリスの1920年代を描いたドラマを毎週見ています。プロレスもリアリティテレビも大嫌いです。

しかし両者に共通するのは、センセーショナルな言動が、視聴者や読者を喜ばせることをよく知っている点です。

髪型も服装もファンを意識したもので、エリートな要素がありません。世の中の大半は保守的な人々であることを知っていて、世相を読むことに長けています。その点ではどちらも優秀なマーケターであると言えます。

ボリスのこの様な背景は、新首相のBrexitへの態度を読むのに重要です。Brexitはあくまで保守層に受ける「マーケティングツール」だったので、実際に起こるとは考えていなかったからです。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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