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ロンドン 敬遠 若者 イメージ

EUでテック人材が不足する理由

Why EU experience shortage of tech workers

2020.01.06

Updated by Mayumi Tanimoto on January 6, 2020, 06:00 am JST

前回の記事では、欧州全体でテック系人材が不足している件をご紹介しましたが、そもそもなぜ、人がそんなにいないのでしょうか。この人材の不足は、EUが最も頭を悩ませている分野の一つで政策検討課題となっています。

EUの「Encouraging STEM studies」というポリシーペーパーでは、人材不足の原因が指摘されています。

・科学技術(STEM)専攻の学生がそもそも少ない

後ろ向きなイメージを持っている若者が多い。
技術系でも現在の市場の需要に合わなくなっている専攻が少なくない。
イメージの問題で女子学生が増えない。

・教員が足りない

特にITでは、実務経験がある教員や教えられる人がいない。

・要求されるスキルが細分化し高度化している

・ブルガリアなど東欧諸国は、90年代に国が崩壊したこともあり
 多くの科学技術系人材が職を失い、スキルや知識の継承が行われなかった

専門家を海外から雇用するには、転居してもらわなければなりませんし、言語の問題もあるため、実際には多くはないというのが実情です。

その代わりに多くの企業では、既存の従業員に追加でトレーニングを提供してなんとかやり過ごしているというケースが多い、と報告されています。

この辺は、日本と若干似ていますね。

ただし日本との違いは、EU加盟国は労働者の権利が強いため、トレーニングが自習やOJTではなく、外部の機関によって提供されることが多いということです。

日本だと「速習なんちゃら」みたいな本がたくさんありますが、欧州では書店に行っても自習用の手頃な値段のテック系の本が殆どありません。

アイルランドのように就労希望者に9カ月から12カ月の短期のトレーニグを実施し、人材不足を解消している国もあります。アイルランドにとっては、海外のIT企業誘致は国家重要戦略の一つなので、国としても力を入れているわけです。

一方でEUのポリシーペーパーでは、テック系人材の多くが中国やブラジル、インドなどの新興国で数多く教育されている点が強調されています。欧州は数で完全に負けている、とはっきり言い切っています。

日本では、ここ最近の少子高齢化がクローズアップされがちなこともあり、スキルや知識の継承という観点ばかりが強調される傾向があり、今の市場の要求に合ったスキルを持ったテック系人材が不足しているという点はあまり注目されません。

そういう人が少ないからこそ、日本からのITの画期的なソリューションや製品が生まれにくくなっている、というのはあるのではないでしょうか。

日本は基礎教育はしっかりしており、労働者も倫理観が高く労働意欲も高いのですが、身に付けるスキルがミスマッチである、という点は無視できないと思います。

欧州に関しては、その辺りを欧州全体の地域的問題として認識している点が日本とは異なる点ですね。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。