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歌詞と歌手を指定するだけで自動作曲・自動歌唱!OpenAI Jukeboxの衝撃

2020.06.16

Updated by Ryo Shimizu on June 16, 2020, 08:37 am JST

OpenAIの勢いが止まらない。
先日はGPT-3を活用した自然言語プラットフォーム「OpenAI API」を紹介したが、もう一つ、OpenAIは歌手と歌詞を指定するだけで自動的に作曲され、歌唱までさせてしまう「OpenAI Jukebox」も発表している。

これがあまりに精巧なのでにわかに信じられないのだが、なんとその成果はオープンソースとして公開されていて、誰でもブラウザ上で追試を行うことができる。

https://colab.research.google.com/github/openai/jukebox/blob/master/jukebox/Interacting_with_Jukebox.ipynb#scrollTo=sAdFGF-bqVMY

まさしく、これは「新しい現実」なのだ。

OpenAI Jukeboxで作られた曲のうちいくつかを聞くことができる。

https://jukebox.openai.com/

見たことも聞いたこともないセリーヌ・ディオンの楽曲がつぎつぎと演奏され歌われていく様は恐怖
にも近い感情を呼び起こされる。

しかも絶妙な歌唱のニュアンスまでほぼ完璧に再現されている。
音楽性も完璧に近い形で再現され、もはや人類はとんでもない時代に突入したのだということを嫌でも思い知らされることになる。

さて、これをどのように我々は捉えるべきだろうか。

確かに、ここまでの完成度でできてしまうと本能的な「危険」さえ感じる。
ちなみに歌詞そのものをAIが作ること自体も、可能か不可能かでいえば十分可能であり、そういうものは、別途公開されているGPT-3やOpenAI APIを使えば簡単だろう。

10年ほど前、日本では初音ミクという実在しないシンガーが誕生した。そこから始まったボーカロイドのブームは全世界にまで広がり、新しい文化となった。

今回のOpenAI Jukeboxは、さらに電子楽曲の新しい可能性を我々人類に示してくれたとも言える。

詩さえ与えれば、それっぽい楽曲を一流シンガーの歌声と伴奏で作ってもらえるのだから活用しない手はない。

インディーズ映画やゲームのBGMとして、下手をすればテーマソングとして、使えるようなこともあるかもしれない。

今のところ、声の「肖像権」のようなものは前例がないため、AIでアイドルを生成したときに生じるような肖像権の問題もツッコミにくい。だいたい、歌唱法と声質が似ているだけで偽物と決めつけるわけにもいかない。

実際、OpenAIをテーマにした歌をセリーヌ・ディオンに歌わせている例もある。

率直に言ってすごい。凄すぎる。

筆者は実はバンドのボーカルをやっていたこともあるし、合唱の全国大会への出場経験もあるが、同じ歌詞を人間である自分もこれ以上見事に歌える気がしない。

囲碁で人間に勝つどころではない。歌唱センスで人間を凌駕しているのだ。

音楽というのは、圧倒的に難しい表現手段のひとつで、これが出来てしまうということは、映画やマンガ、アニメーションといったものが同じように自動生成されてしまうことも十分ありえるだろう。

手始めに次はミュージックビデオの自動生成でもやるのだろうか。
我々はとんでもないライバルと対峙しているのかもしれない。

唯一の救いは、いまのところOpenAI Jukeboxであっても、実在の歌手と伴奏から「学習」しているということだ。学習の元ネタとなる歌手や演奏者にはまだ生存を許される余地がある。

しかしやがてどうなるのかはまだわからない。

ちなみにJukeboxも、全体をひとつの音楽として見ると、終わり方がいまいちだったりするので、人間が適宜「いい感じ」のところを切り取る必要がある。でもそれもいつまで続くのかわからない。

人類はAIとどのように共存していくべきか。
我々は予想よりも早くこうした難題と向き合う必要がありそうだ。

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清水 亮(しみず・りょう)

新潟県長岡市生まれ。プログラマーとして世界を放浪した末、 '17年にソニーCSLとWiL LLC.とともにギリア株式会社を設立し、「ヒトとAIの共生環境」の構築に情熱を捧げる。 '17年より東京大学先端科学技術研究センター客員研究員を兼務。著書として「教養としてのプログラミング入門(中央公論社)」「よくわかる人工知能 (KADOKAWA)」「プログラミングバカ一代(晶文社)」など。

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