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アメリカ政府「H-1B」ビザの発給停止の驚き

Surprise of US government's H1-B ban

2020.06.29

Updated by Mayumi Tanimoto on June 29, 2020, 10:40 am JST

アメリカ政府は、高度な技術を持つ労働者のための「H-1B」ビザ発給の一時停止を決定しました。新規発給の規制は2020年末まで続きます。

短期の非農業季節労働向け「H-2B」や交換研究者なども使用する「J-1」、企業内転勤者向けの「L-1」のビザも規制の対象となるので動揺が広がっています。

日本ではそれほど話題になっていないのですが、テック業界的には経営の面から見て非常に頭の痛い問題です。

アメリカのテック業界の人材の多くは、海外からやってきます。シリコンバレーの場合は働く人の約70%が海外生まれです。さらに、その60%以上が修士以上の学位を持っているので高度技能人材に該当します。

私の同級生の多くも同様ですが、アメリカに留学する外国人の多くは学士や修士、博士号を取得した後に、1年間有効なオプショナル・プラクティカル・トレーニング(OPT)というビザで研修生のような形で働いて、会社側に気に入られればH-1Bビザをスポンサーしてもらってアメリカで働きます。

ビザをスポンサーするというのは、その人を雇う会社がビザの申請費用や弁護士費用を払い(応募者が自分で負担の場合もあります)、「給料を払って雇用しますよ」と政府に伝えることです。

その後、何年か働いてから永住権であるグリーンカードに切り替えたり、人によっては市民権を取得します。

私も、大学院卒業時にOPTを取得していました。インターン先から働かないかという話もあったのですが、家族が倒れたので日本に帰国しました。

H-1Bは、アメリカに学位留学した人であればほとんどの人が知っていますし、アメリカに定住を希望する人のアメリカへのエントリポイントという位置づけなのです。

クリントン政権時代には、このH-1Bビザが大量に発行されており、2000年には年間19万5000件も発行されていました。私の同級生にも、この大量発行の恩恵を受けてアメリカに残って、現在は永住権や市民権を獲得している人がいます。当時は、IT系の人以外にも、マネジメント系や広報、非営利団体で働く文系の人などにも発給されていました。

ところが、ブッシュ政権とオバマ政権で年の発給上限数が大きく減り年間6万4千から6万5千件になり、外国人がアメリカに残って働くのがかなり厳しくなりました。

一見リベラルなように見えたオバマさんも、実は外国人高度技能労働者には結構辛かったわけです。

制限がどのくらい続くか分かりませんし規制が撤廃されてもビザの申請には結構時間かかったりするので、実際は2022年あるいは23年くらいまでは影響が及ぶかもしれません。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。