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【新教養主義宣言・和室的対談】9月18日(金曜)18:00〜20:00:なぜ、いま『和室学』か?   新教養主義宣言・トークイベント vol.7

2020.09.07

Updated by on September 7, 2020, 15:45 pm JST

松村秀一:和室の将来性と存在意義を検証してみよう
--『和室学 世界で日本にしかない空間』  の著者を代表して

自分が育ち暮らしてきた家には和室が一切なく、旅先の宿などで経験したことはあるものの、それは非日常的な数える程の経験にすぎないという若者が増えています。また、私たちは2017年度から「日本建築和室の世界遺産的価値に関する建築学的総合研究」を進めており、その研究の一環で、複数の住宅メーカーや工務店に近年の住宅設計・施工の中での和室の位置付けやその変化について、詳細な聞取りを行いました。すべての企業が改めて自社の実績を調べて下さったのですが、例外なくこの10年程の間に和室の採用率は急減しています。

そのような状況ではありますが、和室は日本の生活文化や建築文化が凝縮したような存在ですし、その和室を通して日本の住まいや暮らしや建築の過去、現在、未来を考えることは刺激的なことかもしれないとも思います。日本の伝統を大事にしようというようなことではありません。和室に凝縮された私たちの生活文化や建築文化の本質は何なのか、そして姿形が変わったとしてもその本質は失われず生き生きと未来の私たちの文化に繋がっていくのだろうか、ということに関心があるのです。

和室を自分なりに解釈すると「日本の中で独自に成立し展開した部屋で、椅子等ではなく床に座る『床座』に対応し、畳の敷き詰められた部屋」というあたりが落ち着きどころになります。でも、畳は必須なのでしょうか。仮に必須だとしても敷き詰めである必要はあるのでしょうか。中世以前の寝殿造りの時代には、敷き詰めない「置き畳」や「廻し畳」というのがありましたが、あれでは「和室」と呼べないのでしょうか。また、全く窓のないコンクリート剥き出しの壁と天井の、しかも入り口がドアの部屋でも、床に畳を敷いてさえいれば、それは「和室」なのでしょうか。

私たちは、和室の過去、つまり今日の和室に直接つながる空間は一体いつどのように日本で成立し、その後どう変容したり普及したりしてきたのか、そして和室の現在、つまり和室はどの程度普及或いは減少していて、そこではどういう暮らしが営まれているのか、更に和室の未来、つまり和室の何がこれからの日本或いは場合によっては世界の人々の暮らしに使われ、それをどのように豊かなものにしていくのか、それを考えようとしています。

「和室」の定義という悩ましい問題に、特に無形の文化的な価値という観点から取り組んだのが、服部岑生氏です。興味深いのは、日本人が「和室」だと感じる空間の特徴は、意外な程に世代を超えて共通しているという事実の発見と、日本人の生活文化自体が、明治維新以降の西洋文明の影響、第二次世界大戦後のアメリカ文化の影響等を強く受けながらも、和室という空間とそこでの暮らしというあり方が、根強く残ってきたことの再認識です。服部氏はこれを「和室のレジリエンス」と呼び、様々なことを取り込み変容しながらもその独自性を失うことなくここまで来た和室と、その未来の展開可能性をとても肯定的に捉えています。

『和室学』の編者である私が、本書の第1章を担当した服部先生をお招きし、この「和室のレジリエンス」について議論してみようというのが今回の対談の趣旨です。和室、古民家、地域創生などにご興味のある方の参加を期待しています。

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【新教養主義宣言・和室的対談】9月18日(金曜)18:00〜20:00:なぜ、いま『和室学』か?』
新教養主義宣言・トークイベント vol.7

日 程:2020年 9月18日(金曜)18:00〜20:00
(17:50からオンラインになります。18時ちょうどに服部先生と松村先生が登場します)
会 場:Zoomを利用したオンラインイベントです。peatixでお申し込みの方に事前に招待メールをお送りします。
参加料:¥3,000(税込):チケットの購入期限は当日9月18日の正午までとさせていただきます
申込み:Peatixよりお申し込みください。(申込みはこちら
主 催:WirelessWireNews編集部(スタイル株式会社)

松村秀一

1957年生まれ。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。工学博士。現在、東京大学大学院工学系研究科特任教授。著書に“Open Architecture for the People”Routledge、2019年、『空き家を活かす』朝日新聞出版、2018年、『ひらかれる建築-「民主化」の作法』筑摩書房、2016年、『建築再生学』市ヶ谷出版社、2016年、『建築-新しい仕事のかたち 箱の産業から場の産業へ』彰国社、2013年、『箱の産業』彰国社、2013年、『団地再生』彰国社、2001年、『「住宅」という考え方-20世紀的住宅の系譜-』東京大学出版会、1999年、『「住宅ができる世界」のしくみ』彰国社、1998年など。

服部岑生

1941年生まれ。東京大学大学院工学研究科博士課程修了。工学博士。千葉大学名誉教授。現在、NPO ちば地域リサーチ理事長。著書に『世界の住まいと暮らし』放送大学教材、1999年、『イギリスの集合住宅の20世紀』鹿島出版会、2000年、『失敗予防の住まい学』放送大学教育振興会、2009年、『間取りの世界地図』青春出版社、2002年、『市民コミュニティ・ビジネスの現場』彰国社、2013年など。作品に多摩ニュータウン若葉台地区、1995年、長野冬期オリンピック村今井町ニュータウン計画、1998年など。

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