19世紀に始まった学問の専門化は、留まるところを知らない。素人目には、全く一つの領域と思われるのに、論文誌は幾つかあって、それぞれの論文誌毎に、それぞれの専門家共同体が構成され、そのメンバー同士は、まるで異星人のように相手を眺めるような事態さえ起こっている。それが学問の進歩とみなされもする。しかも、一つの小さな専門領域の専門家が、何かの間違いで社会の表通りに出ると、あたかも何についても、専門的に充分な素養を持っているかのように周囲からは扱われ、かつ自らもそう振舞いがちになる。この事態に打開策はあるのか。専門家の知識に対比されるのは、無知か、それとも常識か、あるいは良識だろうか。その辺にも、鍵の一つがありそうでもある。このテーマのトークは、一回では終わらないので、次回も期待してほしい。(村上陽一郎)
(解説)私たちは「専門家であること」あるいは「専門性が高いこと」を高度な知識・経験がある人として無条件にリスペクトしてきましたが、東日本大震災、そして今回の新型コロナウイルス(COVID-19)などのように、複数の領域を横断する複雑な社会課題に対しては意外と(下品な言葉ですが)“役に立たない”と感じた方も多いのではないでしょうか。極論とは思いますが「専門性が高い」とは「当該分野以外のことは何も知らない」とパラフレーズすることも可能です。そして私たち自身も実は程度の差こそあれ何かの“専門家”を名乗って仕事をしているはずです。ある種のポジショントークから逃れるのは誰にとっても難しい話です。今回の新教養主義宣言は、人工知能、ゲノム編集、温室効果ガス排出規制など、より高度化・複雑化する社会において、専門性なるものとどう付き合っていくべきなのかを考えるシリーズの第1回になります。今回(11月20日)の、科学哲学の第一人者・村上陽一郎氏による“総論”を皮切りに、2回目以降は村上氏がホストとなって、毎回多彩なゲストをお招きして「専門性」について考えていく予定です。ご期待ください。
(WirelessWireNews発行人:竹田茂)
日 程:2020年 11月20日(金曜)19:00〜(2時間程度を予定)
会 場:Zoomを利用したオンラインイベントです。peatixでお申し込みの方に事前に招待メールをお送りします。
参加料:¥3,000(税込):チケットの購入期限は当日11月20日の18:00までとさせていただきます
申込み:Peatixよりお申し込みください。(申込みはこちら)
主 催:WirelessWireNews編集部(スタイル株式会社)
村上 陽一郎(むらかみ・よういちろう)
上智大学理工学部、東京大学教養学部、同学先端科学技術研究センター、国際基督教大学(ICU)、東京理科大学、ウィーン工科大学などを経て、東洋英和女学院大学学長で現役を退く。東大、ICU名誉教授。専攻は科学史・科学哲学・科学社会学。幼少より能楽の訓練を受ける一方、チェロのアマチュア演奏家として活動を続ける。
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