WirelessWire News Technology to implement the future

by Category

島薗 進(しまぞの・すすむ)

【島薗進氏による私塾】死にゆく人と愛の関係を再構築する技術 第4回:ともに悲嘆を生きるということ 2021年8月20日開催

2021.08.04

Updated by Susumu Shimazono on August 4, 2021, 11:01 am JST

グリーフケア研究所所長・島薗進氏のオンライン私塾の第4回を開催します。

今回のテーマは「ともに悲嘆を生きるということ―グリーフケアと新しいスピリチュアリティ―」。ゲストには日航ジャンボ機御巣鷹山墜落事故の遺族で作る「8・12連絡会」事務局長の美谷島邦子氏をお迎えします。

美谷島氏は1985年に起きた日航機御巣鷹山墜落事故で次男・健さんを亡くし、その悲嘆を遺族会という組織で響き合わせてきました。著作には『御巣鷹山と生きる』(新潮社)や『けんちゃんのもみの木』(ビーエル出版)があり、お別れさえ言えなかった子どもとの死別について発信を続けています。

今回のイベントでは美谷島氏が事故をどのように受け止めたのか、遺族会の役割、墜落現場となった御巣鷹山に登り続けることの意味などをうかがうとともに、事故後の活動や36年を経て見えてきたことなどをうかがいます。

今回もトークの後には、オンライン交流会を開催。島薗氏や美谷島氏、そして他の参加者と直接お話しいただけます。

前回までに続き、聞き手は医療・科学ライターの小島あゆみ氏が担当。医療現場を取材するなかで培った知見を基にグリーフケアを学ぶお手伝いをします。第3回までご参加いただけなかった方にとっても有意義な内容にしていきますので、奮ってご参加ください。

また、お申込みいただいた方が当日お時間に都合がつかなくなった場合には、動画アーカイブでオンデマンド視聴を提供しますので、ご安心ください。

お申し込みは、こちら(https://peatix.com/event/2432453/)からお願いします。

ゲスト・美谷島邦子氏より:心を結ぶために

36年前、私の息子健(9歳)が突然いなくなった日からずーっと私の心の底に沈んでいることがありました。それは、健からの「サヨナラ」の言葉を聞いていないことでした。「サヨナラ」を聞かないまま、輝いていた「いのち」をあきらめることは、できないと思いました。それは、現実から逃げることのようにも思えました。くる年もくる年も御巣鷹山で、看取りのない別れの苦しみを祈ることで癒しました。

「サヨナラ」もないまま、ひとりで茜空に消えた。以来、私は、空を見上げるのが苦手になりました。その母の悲しみを書きとめてきた。そうしているうちに、同じ事故で亡くなった520人のお母さんの存在が、日に日に大きくなっていった。一人ひとりのお母さんの悲しみが、つながっていった。世界中で起きている戦争やさまざまな事故や災害、病などの不条理なことで子を失った母の悲しみも、重なっていった。

悲しみを語ることは 亡き人に愛を届けること。何度泣いたっていい、いつだって泣いていい、「サヨナラ」をたくさん知っている人は、心に厚みを持っている人。向かい合わないと「サヨナラ」はどんどん薄いものになっていく。「サヨナラ」は、遺された人へのエール。「前に行ってもいいんだよ」との言霊。御巣鷹山事故からの36年で聴こえてきた新たな旋律。「心を結ぶために」そんな話をしたいと思います。

主宰・島薗進氏より:グリーフケアと新しいスピリチュアリティ

日本でグリーフケアという言葉が語られるようになったのは1980年代の後半ではないかと思う。なぜ、この時期にグリーフケアという言葉に思い当たるものがあると感じる人が増えたのだろうか。この時期から死別の経験を通して、自らの孤独を強く自覚し、生きる意味を問い返すような人が増えてきたからではないだろうか。他方、死をめぐる伝統的な儀礼になじめないという意識も強まってきた。「喪の仕事」が進まないと感じ、新たな場を求める機運が生じていたように思う。

こうした機運に応じて育っていったグリーフケアの場の早い例に、アルフォンス・デーケンによる「生と死を考える会」がある。それとならんで目立ったグリーフケアの集いとなっていったのは、1985年の日航ジャンボ機の事故の遺族たちの集いだ。その後、阪神淡路大震災があり、池田小学校の生徒殺害事件やJR西日本の福知山線の脱線事故などがあり、遺族の悲嘆のケアが大きな課題となっていく。

日本ではこうした事故・事件、また災害を通してグリーフケアの意義の認識が深まっていった。なかでも8月12日に御巣鷹山周辺で行われる追悼の集いは、こうした気運の背景について多くを教えてくれる。現代人は新たな形で「ともに悲嘆を生きる」ことを求めている。新しい「悲しみの器」を形成しようとしていると言ってもよいだろう。これについて学ぶことは、現代の新しいスピリチュアリティの内実について理解を深めていくことにもなるだろう。

プログラム

19:00 島薗氏によるトーク
19:40 美谷島氏によるトーク
20:30 休憩
20:40 ダイアログ
21:00 質疑応答
21:30 オンライン交流会
※プログラムの内容・順番・時間などは予告なく変更となる可能性がありますのでご了承ください。

開催スケジュール等

●日 程:2021年8月20日(金曜)19:00~(約2時間のトーク&ディスカッションの後、交流会を開催)
●会 場:Zoomを利用したオンラインイベントです。お申し込みは、こちら
お申込みいただいた方には、前日までに参加URLをメールにてお送りします。
●参加料:¥3000(税込)
※チケットの購入期限はイベント当日8月20日の12:00までとさせていただきます。
●オンライン交流会: Zoomミーティングを使用したオンライン交流会を開催します。
●主 催:WirelessWireNews編集部(スタイル株式会社)

メインスピーカー プロフィール

島薗 進(しまぞの・すすむ)島薗 進(しまぞの・すすむ)
1948年東京都生まれ。東京大学文学部宗教学科卒業。同大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。東京大学名誉教授。上智大学グリーフケア研究所所長。おもな研究領域は、近代日本宗教史、宗教理論、死生学。『宗教学の名著30』(筑摩書房)、『宗教ってなんだろう?』(平凡社)、『ともに悲嘆を生きる』(朝日選書)、『日本仏教の社会倫理』(岩波書店)など著書多数。

ゲストスピーカー プロフィール

美谷島 邦子氏(みやじま・くにこ)美谷島 邦子氏(みやじま・くにこ)
1985年の日航機(JAL123便)墜落事故の遺族の会「8、12連絡会」事務局長。精神保健福祉士。障がい者就労支援施設のNPO法人理事長。国土交通省「公共交通における事故による被害者等への支援のあり方検討会」委員。また、文部科学省「学校事故対応に関する調査研究有識者会議」委員等にも就任。「安全」と「命」をテーマに講演活動行う。著書として、「御巣鷹山と生きる-日航機墜落事故遺族の25年-」(新潮社、2010年)、「けんちゃんのもみの木」(ビーエル出版、2020年)等。

WirelessWire Weekly

おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)

登録はこちら

島薗 進(しまぞの・すすむ)

1948年東京都生まれ。東京大学文学部宗教学科卒業。同大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。東京大学名誉教授。上智大学グリーフケア研究所所長。おもな研究領域は、近代日本宗教史、宗教理論、死生学。『宗教学の名著30』(筑摩書房)、『宗教ってなんだろう?』(平凡社)、『ともに悲嘆を生きる』(朝日選書)、『日本仏教の社会倫理』(岩波書店)など著書多数。