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東京工業大学 大岡山 空撮 イメージ

東工大、6G時代の超小型衛星通信に使う新型無線機を開発

2022.07.01

Updated by WirelessWire News編集部 on July 1, 2022, 07:00 am JST

東京工業大学(東工大)は2022年6月23日、6G時代の衛星通信に有望な新型無線機を開発したことを発表した。低軌道衛星コンステレーションに利用可能な超小型衛星搭載用のKa帯(27G-40GHzの周波数帯)フェーズドアレイ無線機で、東工大 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所の白根篤史准教授と工学院 電気電子系の岡田健一教授が開発した。

次世代移動体無線通信システムの6Gでは、地上だけでなく上空や宇宙といった非地上のネットワークを用いた通信網の構築が期待されている。特に大量の小型人工衛星を地球に近い低軌道に配置して連携・協調する「衛星コンステレーション」が実現できれば、極地や砂漠、海上、宇宙空間といった、これまでインターネットに接続することができなかった場所をカバーする超広域な通信エリアが実現可能になる。近年甚大化する自然災害の発生時においても堅牢な通信を提供でき、どこでもいつでも誰もがつながる通信ネットワークの実現が期待されている。

従来の衛星搭載用無線機では、ホーンアンテナのような一方向のみに高い利得を持つ大型のアンテナを使ってきた。だが、こうしたアンテナは低軌道衛星において常に地球を指向するための大規模な姿勢制御機構が必要となり、超小型衛星へは搭載が困難だった。一方、複数のアンテナへ位相差をつけた信号を給電するフェーズドアレイ無線機ならば、基板上の平面アンテナを利用するのでアンテナの小型化を実現でき、送受信したい電波の向きに合わせて最大の指向性を生成するビームステアリング機能で通信方向を制御するので衛星の姿勢を変える必要がない。しかしこれまでは、通信方向を制御するための右旋・左旋両円偏波精度がビームステアリング時に劣化してしまい高速通信が困難だった。

今回の新型無線機では、新たな円偏波補償回路とインピーダンスチューナー回路をフェーズドアレイICに集積することで、どのビーム角でも両円偏波の精度を劣化させずに長距離かつ高精度な高速無線通信を実現することに成功した。具体的には、円偏波補償回路で円偏波の精度を決める2つの直交信号の振幅および位相を正確にIC内部で検出。そして2つの直交信号それぞれに対して同じ電圧検出回路を用いて振幅を検出し、再度同じ電圧検出回路を再利用して2つの信号の位相差を検出する。同じ検出回路を用いることで、回路間におけるミスマッチは発生せず精度の高い振幅および位相情報を得ることができるので、高精度の円偏波を実現できる。

一方、インピーダンスチューナー回路は、ビームステアリングによるアンテナインピーダンス変化をフェーズドアレイIC側で補償することで、どのビーム角でも高い電力効率で通信できるようにする。一般にアンテナのインピーダンスは、地上においてはアンテナの近くにものがあったり、周りの電磁場の状況によって様々に変化する。一方で人工衛星では、アンテナのインピーダンスはビームステアリングの設定される角度によってのみ変化するため、比較的狭い範囲でインピーダンスが変化する。今回の研究では、人工衛星のビームステアリングに特化したインピーダンスチューナー回路を新たに開発し、フェーズドアレイICに集積した。

今回作成したプロトタイプのフェーズドアレイ無線機は、8個のフェーズドアレイICと32素子のアレイアンテナで構成する。フェーズドアレイICは、安価で量産が可能なシリコンCMOSプロセスを用いて製造しており、1チップに8系統のトランシーバーを集積し、4素子の両円偏波対応アンテナを駆動可能である。1系統あたりの面積は0.38平方ミリメートルと小さく、出力電力と消費電力で定義される送信電力効率は14.4%と他の衛星搭載向けの無線機と比べて高い効率を達成している。今回のフェーズドアレイ無線機は、数年以内に小型衛星に搭載して実際に打ち上げ、宇宙空間で実証する計画である。

[リリース]
超小型衛星搭載用Ka帯無線機の開発に成功

 

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