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本当にXR時代はやってくるのか? XR Cityを体験して思ったこと。

2022.07.15

Updated by Ryo Shimizu on July 15, 2022, 13:06 pm JST

朝ご飯を食べていたら、ドコモがXRCityというプラットフォームを立ち上げるという。
しかも全国七カ所同時。その初日が昨日で、そして午前10時スタートということで、さっそく駆けつけてみた。

新宿中央公園に行ってアプリを起動すると、地域に連動したコンテンツが近くにあることがアプリに示された。
今のところ白猫Projectのコラボイベントしかないみたいだ。

写真で示された場所を探して、そこをARで撮影すると画像認識する仕組みのようだ。
新宿中央公園のおそらくそれと思しき場所には、近所の保育園の園児たちが世紀末のフェスのように盛り上がっていた。

地形を認識すると、そこに建物やキャラクターなどが出現する。まさにXRだ。

キャラクターをタップするとセリフを喋るのだが、残念ながら筆者は白猫Projectはチュートリアムで挫折しているのでいまいち誰が何の話をしているのかわからない。

ただ、それほど重要なことを言ってる風でもなかった。
気になったのは、歩き回らないといけない仕様なのに歩いていると「危険です。歩きスマホ」と表示されることだ。

もちろん歩きスマホは危険である。そんなことは百も承知だ。
しかし、これは歩きながら使うことを想定したコンテンツではないのか?

立ち止まって使うのであればXRの意味は半減するのではないだろうか。

そして適当に建物などをクリックすると、突然ピラティスか何かのジムの広告が表示された。
唐突すぎる。建物とピラティスの関係性のなさに衝撃を受けた。

これはバグなのか、こういう意図をもった仕様なのかさえ判断できない。
ピラティスの広告をクリックすると別ページに行こうとするので、広告なのかもしれない。しかしある種、ハックされているのではないかという不安が漂った。

こんな感じのXR体験が新宿中央公園には三カ所もある。

正直、一カ所でもういいかなと思ったのだが、三カ所も用意してくれた気合を汲み取って別の場所も探すが、これが全然見つからない。
ものすごく難易度の高いARG(代替現実ゲーム;Alternative Reality Game)をやっている気分だ。

そもそもアプリの地図の精度が低い。
こういうゲームバランスなんですよと言われればそうなんですか、と引き下がるしかないが、なかなかの難易度である。

ヘコたれてもう一つの目印を探すと、噴水の看板だったので、これならすぐわかると安堵して行ってみた。

また、愉快な建物とキャラクターが出てきて、建物をタップするとピラティスの広告がでてきた。
もしかして、これは何か特殊なスパイを選抜するためのテストなのか?

ピラティスの広告にも実はなにかすごく深い意味が白猫Project的にはあるのだろうか。

XRcityやるよー!と大々的にプレスリリースをしておきながら、都内で体験できるコンテンツが白猫Projectのやつだけ。しかもゲーム性がゼロで、ピラティスの広告に誘導されるだけのシロモノというのは、さすがにちょっと見切り発車に過ぎるのではないかと思う。

まあ当日の朝一でこれをやってたのは筆者以外に一人くらいしかみなかったし、その人はスーツみたいな服を着ていたので関係者の方かなあと思いつつ、インタビューするのは遠慮しといた。

まず、これはシステムとしてはかなり良くできている。
GoogleのARSDKがすごいのか開発を担当したホロラボが凄いのかはわからないが、とにかく、まるで「そこにあるように」ビターッと地面をトラックする。今の技術でできる、ほとんど完璧なXR体験だろう。

ただ、コンテンツが少な過ぎる。
たとえば、まあドコモだからこそできないんだろうが、大昔のセカイカメラのように、空中にエアタグでもつけられれば、SNSとして面白い方向に発展しそうなだけに勿体無い。

セカイカメラは技術が追いついてない(というか技術を無視して企画されたので)企画倒れの面も否めなかったが、今ならちゃんとした「セカイカメラ」が作れるのではないかというところまで手応えを感じた。

Googleのシステムがすごいのであれば、誰でもセカイカメラを作れるので、誰か暇な学生が作ったら大ヒットするのではないだろうか。
もしくは、ホロラボ社が自分でセカイカメラを作ればいいのではないか。セカイカメラという名前にするかはともかくとして。

ただ、次の問題は、セカイカメラがもともともっていた問題と同じように、ネガティブなタグをどうするかというのもある。
今ならAIである程度自動的に判定して、ネガティブなタグは付けることができても表示させることができなくすることはできるかもしれない。いわば地縛霊のように怨念だけ残って目には見えない、という状態にすることはできるだろう。

また、ポケモンGOのスポットがそうであったように、お店などでお金を払うなどすれば、近くにタグを置く/置かない/見せる/見せないまで細かくコントロールできるようになるのではないかと思う。

そうすると、そっちの方が本来ホロラボやNTTドコモがやりたかったことではないだろうか。
でもNTTドコモは性質上、誰でも彼でも不穏なタグがつけ放題のサービスは提供するのが難しいのかもしれない。

筆者も10年ちょっと前に発売されたばかりのiPhone3GSを使って、GPSとARを組み合わせた秋葉原の街でやる鬼ごっこや、渋谷の街を舞台にしたAR宝探しなどを企画・実施したことがある。地元の警察や地元企業に協力を仰いだり、実施方法を相談したりしてなかなか大変だったが、参加した人はみんな大喜びだった。

ARまたはXRは、実は、対象物の「近く」にきた時よりも、「遠く」にいる時のほうが意味がある。
AR宝探しゲーム「クリムゾンフォックス」では、渋谷の街中に隠されたコードを探すのだが、隠されたコードが「だいたいどっちの方角にあるか」はアプリをかざすと距離を含めてわかるようになっていた。

このゲームは、もともとフォックスハンティングという無線愛好家のなかで流行っていたというゲームにヒントを受けている(だからフォックスという言葉が残っている)。

フォックスハンティングは、自動的に信号を発信する無線機(狐)を森や山のどこかに隠し、ハンディタイプの無線機を使って狐を探しに行くというものだ。

遠くからだいたいの距離と方位はわかるけど、いざ近づいたら探さないといけない。
この、「遠くの者同士を結ぶ」ということが、フォックスハンティングやセカイカメラ、筆者のクリムゾンフォックスというイベントのミソだった。

遠くといっても、東京と札幌のような距離ではなく、あくまでも秋葉原や渋谷といった街の狭い範囲でのことだ。

その意味で、XRcityはそういう機能を今のところ全部投げ捨ててる。
地図機能が強いて言えばそれなのだが、地図と写真だけを頼りに目的地に辿り着くのはなかなか難しい。

そしてXRcityそのものはゲームではないので、新宿中央公園内で三カ所もまわるモチベーションを維持するのは、たとえ白猫Projectのファンでもなかなか大変だろう。

そういう意味では、この試みは、今のところ非常に惜しいのである。
東京以外にも大阪や福岡など7都市で同様の体験ができるはずだが、これをわざわざ体験しに行こうという人は相当なスキモノだろうから、あえてこういうローキーなものでいい、という判断なのかもしれない。

あんまり面白すぎるコンテンツを最初から用意してもついてこれないかもしれないし、それで人だかりとかできたらトラブルになって困る。

実際、渋谷でAR宝探しをやったときも、人がたくさん来すぎて大変だった。
発売されてからまだ一ヶ月くらいのiPhone3GSユーザーのみを対象にしても大変だったのだから、ドコモが全国規模で面白過ぎるイベントをやったらとても手に負えなくなってしまうだろう。

しかし今思い返すとあの頃は、一円の得にもならないのになぜそんなイベントを企画したんだろう。
企画した理由は、「面白そうだから」だったのだが、あまりに大変なので一日限定でやったのだった。
あれをマネタイズする方向性も一瞬頭を過ぎったが、この仕事に一生を捧げられるか考えてやめたことを思い出した。

面白いんだけど、面白いからこそ、一度だけでいいものもあるのだ。
ただ、あの頃はリアル脱出ゲームとかそこまで流行っていなかったけど、今はリアル謎解きやリアル脱出ゲームが完全に市民権を得ているので、開かれた謎解きゲームとして企画するのもアリなのかな。

XRcityが見せてくれるのは、とにかくそういうかつて夢見た世界が、ついに実現できるところまでテクノロジーが追いついてきた、という現実だ。
その意味では、びっくりするくらい正確に再現されるXRブツを見るためだけに新宿中央公園に行くのもアリかもしれない。デートにはお勧めしないが。

これをきっかけとして、実際になんかやってみたくなるのは本当である。

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清水 亮(しみず・りょう)

新潟県長岡市生まれ。1990年代よりプログラマーとしてゲーム業界、モバイル業界などで数社の立ち上げに関わる。現在も現役のプログラマーとして日夜AI開発に情熱を捧げている。

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