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関 隆広 (せき・たかひろ)名古屋大学大学院工学研究科(工学博士)

アゾベンゼン(azobenzene)が私に語りかけてくるんです

New Strategies for Photoresponsive Soft materials Based on the Molecular Assembly

2022.07.15

Updated by Schrodinger on July 15, 2022, 18:22 pm JST

光励起、すなわち原子・分子・素粒子などに電磁波を吸収させ、特定のエネルギー状態に励起させることで、非接触操作で材料システムの構造や機能特性を制御しスイッチングさせることができます。このような高分子や液晶材料などのソフトマテリアル(柔らかい高分子:金属などはハードマテリアル)に光応答機能を付与する手法(=有機フォトクロミック)は、現在のスマート材料化学の大きな潮流なんだそうです。

今回ご登場いただく関先生の研究は、この光応答ソフトマテリアルにアゾベンゼン(azobenzene)を用います。アゾベンゼンは、2個のベンゼン環が -N=N- 二重結合(アゾ基)でつながった構造 (C6H5-N=N-C6H5) を持っているのが特徴です。光を当てることで単一の化学種が分子量を変えることなく色の異なる二つの異性体を可逆的に生成する現象がフォトクロミズムですが、アゾベンゼンはこの有機フォトクロミック材料の中でも、圧倒的に論文数が多い材料です(他にスピロオキサジン、フリルフルギド、ジアリールエテンなどがあります)。

アゾベンゼンなどの芳香族アゾ化合物は、色素になるものが多く「アゾ色素」と呼ばれるのですが、関先生がこのアゾ色素の研究をスタートしたのは、なんと学部生時代なのだそうです。しかも、このアゾベンゼンの光異性化反応が発見されたのは1937年ですから、そこからは既に85年近く経過しているわけです。つまり、たくさんの研究者(この分野では日本が圧倒的に強い)が実に長期間、このアゾベンゼンを用いた実験を繰り返している。我々の感覚からすれば(失礼な物言いですが)「よく飽きないな」と思いますよね。

有機フォトクロミズム

この素朴な疑問に対する関先生の答えは、「物質のほうから語りかけてくる(時々、面白い顔を見せてくれる」です。一つの物質でもそれを徹底的に突き詰めていくと、最後は物質のほうからコミュニケーションを取ろうとする、ということなのかもしれません。実に奥深く神秘的な世界です。

関先生は、今年3月に名古屋大学を退官されていますが、(お約束の)「最終講義」が諸般の事情により延期された状態になっています。つまり、今週の「シュレディンガーの水曜日」は、関先生の最終講義のエッセンスをいち早く拝聴できる機会になるかと思います。自分の研究方法に悩む若手研究者には非常に参考になると思いますよ。知る人ぞ知るスゴい人ですからね(なお、下記にある関先生の受賞歴は、ご本人の意向を無視して掲載させていただいております)。(竹田)

募集要項
7月20日(水曜日)19:30開始
アゾベンゼン(azobenzene)が私に語りかけてくるんです

関 隆広 (せき・たかひろ)名古屋大学大学院工学研究科(工学博士)関 隆広 (せき・たかひろ)名古屋大学大学院工学研究科(工学博士)

1983年東京工業大学大学院理工学研究科高分子工学専攻博士後期課程中途退学。1986年通産省工業技術院繊維高分子材料研究所研究員(工学博士)、1995年東京工業大学資源化学研究所助教授を経て、2002年名古屋大学大学院工学研究科教授。専門は光機能高分子材料。

受賞歴
高分子学会Wiley高分子科学賞(2002年)
日本液晶学会論文賞 (2005年)
日本化学会学術賞 (2006年)
日本液晶学会論文賞 (2008年)
高分子学会賞 (2013年)
日本液晶学会論文賞 (2015年)
日本液晶学会論文賞 (2018年)
科学技術分野の文部科学大臣表彰(2018年)
東海化学工業会功績賞 (2019年)
日本液晶学会業績賞 (2019年)
光化学協会JPA Special Lectureship Award( 2021年)
日本化学会賞(2021年)

・日程:2022年7月20日(水曜)19:30から45分間が講義、その後参加自由の雑談になります。
・Zoomを利用したオンラインイベントです。申し込みいただいた方にURLをお送りします。
・参加費:無料
・お申し込み:こちらのPeatixのページからお申し込みください。


「シュレディンガーの水曜日」は、毎週水曜日19時半に開講するサイエンスカフェです。毎週、国内最高レベルの研究者に最先端の知見をご披露いただきます。下記の4人のレギュラーコメンテータが運営しています。

原正彦(メインキャスター、MC):東京工業大学・物質理工学院応用科学系 教授原正彦(メインコメンテータ、MC):東京工業大学・物質理工学院・応用化学系 教授
1980年東京工業大学・有機材料工学科卒業、1983年修士修了、1988年工学博士。1981年から82年まで英国・マンチェスター大学・物理学科に留学。1985年4月から理化学研究所の高分子化学研究室・研究員。分子素子、エキゾチックナノ材料、局所時空間機能、創発機能(後に揺律機能)などの研究チームを主管、さらに理研-HYU連携研究センター長(韓国ソウル)、連携研究部門長を歴任。現在は東京工業大学教授、地球生命研究所(ELSI)化学進化ラボユニット兼務、理研客員研究員、国連大学客員教授を務める。

今泉洋(レギュラーコメンテータ):武蔵野美術大学・名誉教授今泉洋(レギュラーコメンテータ):武蔵野美術大学・名誉教授
武蔵野美術大学建築学科卒業後、建築の道を歩まず、雑誌や放送などのメディアビジネスに携わり、'80年代に米国でパーソナルコンピュータとネットワークの黎明期を体験。帰国後、出版社でネットワークサービスの運営などをてがけ、'99年に武蔵野美術大学デザイン情報学科創設とともに教授として着任。現在も新たな表現や創造的コラボレーションを可能にする学習の「場」実現に向け活動中。

増井俊之(レギュラーコメンテータ):慶應義塾大学環境情報学部教授増井俊之(レギュラーコメンテータ):慶應義塾大学環境情報学部教授
東京大学大学院を修了後、富士通、シャープ、ソニーコンピュータサイエンス研究所、産業技術総合研究所、米Appleにて研究職を歴任。2009年より現職。『POBox』や、簡単にスクリーンショットをアップできる『Gyazo』の開発者としても知られる、日本のユーザインターフェース研究の第一人者だがIT業界ではむしろ「気さくな発明おじさん」として有名。近著に『スマホに満足してますか?(ユーザインタフェースの心理学)(光文社新書)など。

竹田茂(司会進行およびMC):スタイル株式会社代表取締役/WirelessWireNews発行人竹田茂(司会進行およびMC):スタイル株式会社代表取締役/WirelessWireNews発行人
日経BP社でのインターネット事業開発の経験を経て、2004年にスタイル株式会社を設立。2010年にWirelessWireNewsを創刊。早稲田大学大学院国際情報通信研究科非常勤講師(1997〜2003年)、独立行政法人情報処理推進機構・AI社会実装推進委員(2017年)、編著に『ネットコミュニティビジネス入門』(日経BP社)、『モビリティと人の未来 自動運転は人を幸せにするか』(平凡社)、近著に『会社をつくれば自由になれる』(インプレス/ミシマ社)、など。

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