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機械のアニミズム

2023.01.12

Updated by WirelessWire News編集部 on January 12, 2023, 06:48 am JST

対自然に留まらない、宮崎駿のアニミズム

その者青き衣をまといて金色の野に降りたつべし。失われし大地との絆を結び、ついに人々を青き清浄の地に導かん

青いワンピースを身にまとった女の子、ナウシカ。金曜ロードショーで繰り返し放映される、アニメ「風の谷のナウシカ」の主人公である。特別に漫画やアニメが好きな人でなくても、このアニメ作品を視聴したことのある人は多いはずだ。

アニメ版「風の谷のナウシカ」のストーリーはシンプルだ。大昔の人類の戦争により、世界が徹底的に破壊されたあと、荒廃した大地には「腐海」と呼ばれる森が繁茂した。腐海から吐き出される胞子による健康被害を避けるために、人々はいつもマスクをつけて暮らしている。また、蟲と呼ばれる凶暴な生き物たちが人間に襲いかかる。

辺境の地、風の谷で生まれ育ったナウシカは、草木や動物を愛し、人々の忌み嫌う蟲ともコミュニケーションが取れる。彼女は腐海が、人間が汚染した土壌を浄化するエコシステムの一部であることを発見した。戦争で殺し合い、この世界を破壊し続ける人間たちを止めるために、ナウシカは立ち上がる。アニメでは、ナウシカは人間と自然の共生を訴える、エコロジストのようなヒロインだった。アニメ版ナウシカは、中高生向けの環境教育で教材として使用されることもある。

この作品を監督した宮崎駿が、アニミズム的な感性を持っていることは公然の事実だろう。批評家や研究者もこぞって宮崎のアニミズムについて論じてきた。宮崎自身もアニミズムが好きであると明言し、森の中には立ち入れない深遠の世界があるという感覚について語っている。目に見えない、「なにかがいる」という直感。科学的には観測されない、人の認識を超えた世界こそが、アニミズムの世界だという。そして、人間がその超越的な世界への繋がりを失うと、自分の存在そのものが薄っぺらいものになると述べている。(宮崎駿『出発点』徳間書店、1996年)

宮崎は、自然との関係を通して神々や精霊の世界を見出すことを通じて、自己を豊かにできると考えているのである。

私も、宮崎駿のアニミズム的感性が「風の谷のナウシカ」にどう反映されているのかについて、大きな関心を抱いてきた。この作品を読むことを通して、人々がアニミズムの世界を直感的に知覚する力を取り戻せるのではないかと考えたのだ。

ところが実際に、研究者として「風の谷のナウシカ」を分析し始めると、宮崎駿のアニミズムの射程は、人間と自然との関係にとどまらないことに気づいた。

※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の抜粋です(この記事の全文を読む)。
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