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大学はどの様にAIによる不正を防止しているか?

How do universities prevent plagiarism by AI

2023.04.30

Updated by Mayumi Tanimoto on April 30, 2023, 13:58 pm JST

AIを使用して学生が課題や試験を提出する例が増えており、大学にとって頭の痛い問題です。日本ではあまり話題になっていないようですが、イギリスや北米は英語圏のため、AIを使用する学生が多く、既に様々な対策が行われています。

家人や私の友人達も大学の研究者なので、Chat GPTが出回り始めてすぐに対策を始めました。学生が課題にAIを使用することを防止するために、大学は主に以下のような対策をしています。

1. 明確なガイドラインを作成する

課題にAIを使用することに関する明確なガイドラインや指示を提示する大学が出てきています。授業や試験で許可されたツールや技術、禁止するものをできるだけ明確にします。

2. 剽窃チェックソフトウエアの使用

大学は、学生がAIによって生成されたコンテンツを使用したかどうかを検出するために、剽窃チェックソフトウエアを使用することが増えています。

イギリスやカナダの場合は、元々エッセイ(小論文)や課題が提出されると担当事務職員が課題をソフトウエアにかけて、ネットや既に出版されているものと比較し、剽窃や盗作をチェックする仕組みがあったので、これをChat GPTの様なAIの仕様についてもチェックする仕組みです。ソフトウエアがAI対応にアップデートされていたりします。

3. 筆記試験

古いようで新しい方法ですが、オンラインで課題を提出したり、自宅で作成した小論文を提出させる代わりに、教室に来てもらってその場で手書きで試験問題を解いてもらいます。デジタル化が進んできたことで、不正防止のために古き良き方法が却って見直されつつあるという温故知新な感じですね。教員が目の前で監視しているので不正ができませんが、学校に来なければならないので学生には不評ですが。

4. 口頭試験

実はイタリアを中心とする欧州大陸では、昔から大学の試験は口頭試問が結構多く、卒業試験の最終試験は試験官の質問に口頭で答えます。古代からの学問のやり方に沿っているわけです。口頭だと、カンニングはまず無理、スマートフォンも使えませんし、教科書の持ち込みもできません。質問は一人ひとりで異なりますし、ランダムなので相当な勉強が必要です。

イギリスでも、最近はもう試験は口頭でやるほかないという流れになっている学部もあります。一対一の口頭試験の代わりにその場でプレゼンテーションしたり、パネルディスカッションをやるという方法もあります。これも、デジタル化が進んだので古代の方法が見直されているという例ですね。

4. ランダムな問題

課題や試験にランダムな問題を使用することで、学生がAIで回答することを防ぐことができます。典型的ではない質問をしたり、かなり変わったことを問うわけです。過去問は使えないので、教員の負担は増えますが。

5. 個別の課題

学生一人ひとりに別々の課題を割り当てたり、個人の事情や背景に極端にカスタマイズした質問や課題を与えることで、AIでの回答ができなくなります。例えば「実家の事業の過去3年分のマーケティング戦略を説明せよ」などです。ニッチ過ぎてネットにはコンテンツが出ていないので、自分で回答する他ありません。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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