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AIが躍進させる地球観測領域。ただし必要なのは、ますます多くの観測データである

2023.09.05

Updated by WirelessWire News編集部 on September 5, 2023, 13:57 pm JST

1日1回地表を観測すると、1年に蓄積されるデータの量は?

ひとつ、簡単な見積もりをしてみよう。地球の表面積はおよそ5億1,000万平方km、うち陸地が1億5,000万平方kmで、海洋が3億6,000万平方km。このうちの陸地を地球観測衛星で観測するとする。

分解能としては、現在の民間地球観測衛星の上限である25cmを仮定しよう。パンクロマチックの画像を得るとして、1ピクセルに16ビットのデータ量を割り当てるとする。白をゼロ、真っ黒を65535としてグレーの階調を記録するという意味だ。ランドサットの観測データは8ビットで階調を記録している。データ量2倍というのは、近未来の地球観測衛星のセンサーとしては妥当なところだろう。2022年現在、最新の地球観測衛星は、11~12ビットを採用している。

すると、全地表をモノクロの16ビット、分解能25cmで観測した場合のデータ量は、1億5000万×1000×1000×16×16=38.4京ビットということになる。もう少し馴染みのある単位に換算すると、8で割って4.8京バイト。48ペタバイトと言ったほうが通りがいいかもしれない。これは10進法で表記した場合で、コンピューターの記録媒体などでは10の三乗 = 1000倍ではなく、1024倍でメガ、ギガ、テラと名称を切り換えていく。こちらの表記では43ペタバイト程度となる。

これはモノクロのデータだから、カラーのデータを得ようとすると容量は増える。人間の目はRGBの3色で色彩を認識するので、3波長で観測するとなるとデータ量は3倍、これに近赤外1波長を加えると4倍になる。多波長に分光してデータを得るとなると、データ量は観測波長の数だけ増えていく。

とりあえずここでは、可視光3波長に近赤外1波長を観測すると仮定すると、データ容量は4倍の約170ペタバイトとなる。ただし、現行の地球観測センサーの設計では、分光データの分解能はモノクロの1/3~1/4程度に落ちる。モノクロが分解能25cmなら、分光データは1m程度ということだ。するとトータルでは、データ量は約2倍の86ペタバイトだ。

この密度で1日1回地表を観測するとするなら、1年に蓄積されるデータは365倍の約15~30エクサバイトである。

「何という巨大な容量か」と一瞬思ってしまうのだが、実は2022年段階で、人類が地上に保有する総ストレージ容量は、すでにエクサの上のゼタバイトの単位に突入している。IDCの調査によると、2023年の世界のクラウドサービスの総容量は11.7ゼタバイトになると予想されるという。つまり、2030年か40年か、いずれにせよ今世紀前半のどこかで、人類はこの規模の地球観測データを楽々扱える計算機環境を構築することになるだろう。

※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の抜粋です(この記事の全文を読む)。
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