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外国人観光客のドライブ観光データを分析――インバウンド需要喚起へ向け、具体的な施策に臨む

2018.06.27

Updated by 創生する未来 on June 27, 2018, 12:00 pm JST

ナビを見ながらドライブする男性

ナビタイムジャパンと北海道開発局が協定を締結

日本政府観光局によると、2017年の外国人観光客(インバウンド)数は約2900万人に上る。2016年が約2400万人と比較すると、前年度比約120%と急激な伸び率である。

その理由として、アジア圏の経済成長やLCCの普及、ビザの緩和などが挙げられる。今後も成長が見込まれる分野のため、インバウンド観光に取り組む自治体や企業も少なくない。

株式会社ナビタイムジャパンは、こうしたインバウンド観光による北海道の地域活性化を目的とし、国土交通省 北海道開発局と「協働事業の実施に関する協定」を2018年4月に締結した。世界水準の魅力ある観光地づくりに向け、組織的な連携と協力体制の構築を目指す。

北海道におけるインバウンド観光の課題として、札幌などの道央圏を除く地方部への誘導と、閑散期の需要喚起が挙げられてきた。そこでナビタイムジャパンは北海道開発局と協働で、2017年9月1日から11月30日に「北海道ドライブ観光促進社会実験」を実施した。

同実験では、ナビタイムジャパンで開発したアプリ「Drive Hokkaido!」を活用し、地域課題の分析に取り組んだ。Drive Hokkaido!とは、北海道のレンタカーでの移動をサポートする訪日外国人向けのアプリとなっている。たとえば、周辺のガソリンスタンドや道の駅などの検索機能、北海道の道路や天気の情報が確認できるといった機能がある。

▼Drive Hokkaido!のイメージ 出典:株式会社ナビタイムジャパン
Drive Hokkaido!のPR用イメージ画像

ドライブ観光の促進は、地方部への誘客に効果的

この実験では、1211人の外国人観光客がアプリを利用し、道内でレンタカーを利用した外国人観光客の6%のデータを収集できたとしている。

具体的には、地方部の旭川や知床など339カ所の観光スポット情報や、ホテルや飲食店などで利用できる249施設のクーポン情報をアプリ内で発信。同意を得られたアプリユーザーからのGPSデータを参考に、移動経路や立ち寄りスポット、滞在時間などを分析した。

同実験の結果、アプリユーザーに占めるリピーターの割合は約4割となり、ドライブ観光客はリピーターが多いことが明らかになった。また、ドライブ観光客は道央圏に限らず、道内各地をまんべんなく観光していることが判明したという。

2016年に行った北海道庁調査では、道内の外国人観光客の平均宿泊日数は3.7日だった。ドライブ観光客を対象にした同実験では、5.8日と宿泊日数がやや長い結果となった。

さらに、アプリユーザーのアンケート調査によると、約7割のユーザーが「アプリを使って立ち寄った施設がある」と回答した。北海道におけるドライブ観光の促進は、外国人観光客の地方部への誘客に効果的だと示す結果となった。

▼今回の協定締結に関する概要 出典:株式会社ナビタイムジャパン
ナビタイムジャパンと北海道開発局による協定締結資料

データを活用した、生産性の向上を

ナビタイムジャパンと北海道開発局は、実験で終わらせず「Drive Hokkaido!」を継続して運営していくため、協定の締結に至った。アプリ運営を通じ、外国人観光客の季節ごと、年度ごとのデータの違いなどを継続的に把握し、具体的な施策につなげていく。

アプリ内で得られた移動経路といったGPSデータなどは、実験に参画した飲食店などの地域事業者に情報提供を行っていくという。こうしたデータを活用することで、営業時間の変更や仕入れの調整といった生産性の向上が期待される。

長期的には、北海道でのレンタカー観光に関するコンテンツを集約したプラットフォームを設け、外国人観光客に北海道の観光情報の配信も行っていく予定だ。

(執筆:高木健太)

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