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埋もれたデータの宝庫たる偵察衛星と地球観測
2023.09.21
Updated by WirelessWire News編集部 on September 21, 2023, 06:48 am JST
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2023.09.21
Updated by WirelessWire News編集部 on September 21, 2023, 06:48 am JST
1960年代の地表は、偵察衛星からしか撮られていない
安全保障用途の偵察衛星の歴史は、ロケットの開発により地球を周回する人工衛星が現実のものとして考えられるようになった時点から始まっている。アメリカでは中央情報局(CIA)が、偵察衛星の開発を開始し、最初の偵察衛星「KH-1コロナ」1号機は、1959年6月に打ち上げられている。旧ソ連でも事情は同様で、最初の偵察衛星「ゼニット」は1956年から開発が始まり、初号機は1961年12月に打ち上げられた(なおゼニットは当初失敗が続き、初めて成功したのは、1962年7月打ち上げの4号機だった)。
最初の地球観測衛星「アーツ(ランドサット1)」の打ち上げは1972年7月だ。つまり偵察衛星は、地球観測衛星よりも10年前から、機密の壁の向こう側に営々と地球観測データを蓄積してきたのである。人類の知的資産という観点からすると、1960年代の地表の様子は、偵察衛星の撮像データしか存在しない。
前回の記事で、「これまで『なんの役に立つのか』と言われつつも蓄積してきた地球観測データが、AIを訓練し、新たな情報をデータから引き出す手法の開発に使われているのだ。」と現状を要約した。ところで、ここにもっとも古くから、しかも大量に蓄積された人類の知的資産として、偵察衛星の撮影画像というものが存在する。これを、有効活用することはできないものだろうか。
「ついで」に映り込んだものが貴重なデータに
アメリカの偵察衛星は各世代毎に「KH(Key Hole)」というナンバーと、聞いただけでは直ぐには偵察衛星とは分からないコードネームを持っている。最初の偵察衛星は「KH-1コロナ」で、以後KH-4までがその改良型で一連の「コロナ」シリーズだ。
コロナは、大面積の写真フィルムで地表を撮影し、再突入カプセルでフィルムを地上に回収するという、手間も時間もコストもかかる方式を採用していた。デジタル撮像技術が未発達だった1960年代に、高分解能で地表を撮影しようとしたら、これ以外の方法がなかったのである。
コロナの撮像データの分解能は当初約13mほどだったが、後にカメラの改良で進歩し、最終型のKH-4では7.5mまで向上した。ランドサット1に搭載されたセンサー「MSS (Multispectral Scanner)」の分解能はおよそ80mだったので、偵察衛星は、ランドサットの10年前からはるかに高い分解能で地表を記録していたわけである。
もちろん偵察衛星の主な撮影目標は仮想敵国の軍事施設で、地球の全表面を撮影していたわけではないが、それでも「ついで」に映り込んだ主目標以外の地表のデータは大変貴重なもので、分析により様々な科学的知見を獲得することが可能だ。
※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の抜粋です(この記事の全文を読む)。
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