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ピカピカの建築物よりもデータでまちづくりの「良い計画」を作る

2023.11.23

Updated by WirelessWire News編集部 on November 23, 2023, 11:57 am JST

MR技術を使っても計画のプロセスは変わらない

前回、郊外の土地を生かすために市民とともにワークショップを進めてきたことを紹介した。

改めて、4つのステップを振り返ってみよう。最初のステップは「導入」、2番目のステップは「敷地調査と課題の検討」、3番目のステップは「整備方針の検討」、4番目のステップは「空間イメージの検討」である。

3D都市モデルやMR(Mixed Reality)技術を使うとはいっても、この4段階は特段に新しいものではな。お互いをよく知らない人が集まり、コミュニケーションを重ねながら、限られた時間の中で結論を見出そうとするときの標準的な計画のプロセスである。

しかし、これまでの方法と大きく異なるのは、そこに流し込まれ、参加者によって加工され、循環していく「情報の質と量」である。紙に印刷された図面よりも、3D都市モデルのほうが、はるかに質の高い、多くの情報を直感的に伝えることができる。

現実的には、100枚の紙に印刷された地図を使うことも、50種類の建物模型を使うことも難しく、通常のワークショップで使う地図は多くても5枚程度であるし、模型も3種類程度しか準備しない。

3D都市モデルデータはそれよりは格段に多くの情報を扱うことを可能にし、大量の情報がワークショップで設計された4ステップに流し込まれ、参加者からの情報も引き出され、それらが参加者の手によって加工されて、空間のイメージが作り出されたのである。

では、これらが「まちづくりのDX」にどうつながっていくのかを考えていこう。まちづくりのキモは、まずは「良い計画」が作られること、そしてそれを動かす「良い人のつながり」が作られることである。そして、特に公共事業の場合、それが意思決定者である市長や議会が納得する「良いプロセス」で作られていることにある。

このプロジェクトは、単に「ほしいものが、ほしいわ」という状況にあったが、4ステップを経て大量の情報が組み合わされ、このプロジェクトでやってみたいことの幅が大きく広がり、計画の内容が充実した。八王子市のウェブサイトでは、「北野下水処理場・清掃工場跡地活用基本構想(素案)」が公開されている。

重要なことは、建築家が全能のアーキテクトよろしく、素晴らしい、ピカピカとした提案を作るのでなく、既に公開されているデータや、市民の問題意識を混ぜ合わせること、いわば「あり合わせの素材」を集め、それを料理する環境をデジタルの力を借りて作ることである。それによって、計画が充実化していったのである。

データはどの都市でも使うことができるものばかりであるし、市民がいない都市などない。どの都市にもある素材を使うだけで、「良い計画」をつくることはできるのだ。

※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の抜粋です(この記事の全文を読む)。
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