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IT業界とその土台

IT industry and foundation

2024.04.05

Updated by Mayumi Tanimoto on April 5, 2024, 06:50 am JST

日本のIT産業や経済活性化に関する議論が行われており、失れた30年をどう取り戻していくか ということが話題になることが少なくありません。しかし、多くの日本人が自覚していない点として、このような議論の根本として日本が他の先進国、特にアメリカに対して決定的に負けている、という点があります。

それは特に、IT業界に関して顕著です。日本では、IT業界というとどうしても報道される部分が消費者向けのアプリケーションやサービスといったものが主流になるわけですが、そういった行動にばかり触れている方が多いので、日本ではもっと重要な部分が抜けているということに気付かない方があまりにも多いのです。

それは「IT業界の土台になる部分のほとんどはアメリカの企業が抑えている」という点です。例えば、消費者向けのアプリケーションやサービス、スマートフォンといったものは目に見えやすいのでアメリカの企業の存在が大きいということを自覚している方は多いでしょう。

最近、皇室がSNSでの発信を発表しましたが、Instagramが使われるということに衝撃を受けた方は少なくないのではないでしょうか。選ばれたのは 日本企業が作ったものではなかったのです。これまでネットでの発信に及び腰だった皇室がInstagramを選ぶということは、それだけこのアプリケーションの影響力が世界的に強いということです。

またこれに関しては、皇室が大好きなXユーザーが非常に落胆したという点もありますが、世界的にはやはり影響力が強いのはInstagramであります。途上国でも使用されており、実は 欧州や北米に押し寄せる難民の少なからずは「インスタ民」であります。

自国が開発したアプリケーションから発信される意識高い情報を元に難民が押し寄せる、という大変皮肉な状況にアメリカは陥っているわけですが、情報発信のインフラと化しているのでアメリカ政府はインスタを禁止するわけにも行きません。それだけ影響力が強いということです。

アメリカ企業の強さは こういったアプリケーションだけではなく、通信の土台の部分にもあります。現在、日本で 設立されるデータセンターの少なからずはアメリカの企業のものであり、そのスケールやスピードは日本の企業の力が全く及ばないのです。

これはどういうことかと申しますと、日本の命運はほぼアメリカに握られているということです。第1次世界対戦の際にイギリス政府は既に世界中に海底ケーブルを通し通信を独占することで 戦いに勝利しました。敵の通信を傍受し、時には海底ケーブルを切断したのでした。通信社はスパイ行動に加担していました。

土台と基準を抑えることが最も重要なのです。そして数多くのスポーツのルールを作り上げたのは、7つの海を支配していた 大英帝国でした。英語は現在でも世界中でほぼ公用語のような形で使われています。世界の経済や政治というのは、英語を母語とする人々のルールに沿って動いています。

つまり、これと全く同じことがIT の世界でも起きているわけです。勝つものは土台とルールを支配します。日本では、経済活性化においてDXやアプリケーションをどうするかという話ばかりが話題になりますが、ポイントはそこではないのです。

土台を握られてしまってはもうどうすることもできません。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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