データで進化する持続可能な街づくりを推進し、ブロックチェーン都市の実現を――。
石川県の南西部に位置する加賀市は2018年3月、ブロックチェーン技術を活用して、地域コミュニティでの新たな経済圏創出を目指すと発表した。
加賀市は、全国有数の温泉地であり、粟津温泉や山代温泉などが有名だ。日本を代表する器「山中漆器」「九谷焼」の発祥地でもある加賀市は、毎年200万人の観光客が訪れる。
今回発表されたプロジェクトは、地域情報化のノウハウを持つ株式会社スマートバリューと、ブロックチェーンの研究開発を手掛けるシビラ株式会社との協働で進められる。
加賀市は、ブロックチェーン技術を活用することで、電子行政などの社会コスト削減や利便性を高めることを狙う。地域産業の経済効果につながる分野で、共同研究開発にも取り組む。これにより、日本初となる「ブロックチェーン都市」の創出を目指すという。
▼ブロックチェーン技術を活用した加賀市の都市構想 出典:加賀市
ブロックチェーン技術を活用した事例には、たとえばエストニアが挙げられる。エストニアの医療分野では、カルテと処方箋がブロックチェーン技術によって電子化されている。
医療の手続きには、これまで正確性や安全性を保証するプロセスに多くのコストがかかっていた。しかし、ブロックチェーン技術を活用したことによって、データの正確な連携、それにともなう認証、コストの削減などが可能になったという。
他にも行政分野のサービスでは、「e‐Residency」と呼ぶデジタルIDカードがある。「婚姻届け」「出生証明」「銀行口座開設」などに利用でき、これらの手続きに足を運ばなくてもよくなるため、国民と政府双方にとって大幅なコスト削減につながる。
加賀市では、最初に2019年度からブロックチェーン技術を基盤とした「KYC認証」の構築を開始するという。KYC認証とは「Know You Customer」の略で、個人を特定するために公的書類で確認し、不正をなくすための手続きのことを指す。
KYC認証基盤を構築することで、地域で展開する各サービスのアプリケーションを連携させることが可能になる。これにより、サービスの認証を一元化でき、社会コストの削減やプラットフォームに集積したデータを活用した研究開発を図ることができる。
▼ブロックチェーン都市に向けた締結式の様子 出典:加賀市
また、加賀市の取り組みにICT技術を掛け合わせた地域サービスを開発をする場として、ラボも建設する。ラボでは、IT人材の育成から雇用へとつなげていくコミュニティの場や、セミナーや講習を通したリアルなコミュニケーションの場としての役割も担う。
今後は地域課題や発展に情熱を持った市内外の事業者とも連携し、地域経済の創出、新たな産業の発展、データを活用した先進的な地域づくりに取り組むことを目指していくとした。
(執筆:高木健太)
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