写真:PradeepGaurs / shutterstock
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2023年12月、アップルは今後2~3年の間は年5000万台以上のiPhoneをインドで生産することを発表した。これにより今後数年間は、世界のiPhoneの4分の1がインドで生産されることになる。新たな生産拠点としてインドが選ばれた理由はなぜか。インド在住のKaede氏が紐解く。
日本の定番土産はiPhone
「日本でiPhoneを3台購入したよ。家族に頼まれてね」
日本へ出張に行くインド人の同僚や友人から、頻繁にこうした話を聞く。日本のAppleストアでは多くの外国人を見かけるが、そのなかにはインド人の観光客らしき人も少なくない。
なぜ、日本でわざわざiPhoneを購入するのか。理由は、インド国内でiPhoneを購入すると高い輸入関税により高額になるからである。インドでは、国内製造促進策により高額な輸入関税が掛けられるため、日本でiPhoneを購入するほうがお得なのである。例えば、iPhone 15シリーズの価格を比較すると、iPhone 15 Proの価格は、インドでは 134,900ルピー(約235,576円)、日本では159,800円であり、インドでの価格は日本の約1.5倍である。
日本だけでなく、アメリカや東南アジア、ドバイなどで、インドの人々がiPhoneを購入するのも一般的である。出張や旅行の際に購入する、または外国に住むインド人の友人や親戚に購入してもらうのである。
インド国内では、iPhone市場が急拡大している。これまで、インド国内のスマートフォン市場は、アンドロイドOSのスマホが圧倒的に強かった。インドの人々の購買力が向上し、アッパーミドル層や富裕層を中心に、iPhoneユーザーが増えているのだ。
インドでは最新モデルは生産されていなかった
2023年12月、アップルは今後2~3年の間に年5000万台以上のiPhoneをインドで生産する計画を発表した。今後数年間で、世界のiPhoneの4分の1はインドで生産される。2022年度(22年4月~23年3月)時点で、全世界のiPhone生産のうち、インド製iPhoneの割合は7%だったが、2024年度には18%まで拡大すると見込まれている。アップルは、iPhoneを含む自社製品の9割を中国で生産してきたが、インドに生産拠点をシフトしようとしている。
アップルは2017年の時点で、既にインドでのiPhone製造を開始していたが、iPhone SEなど旧モデルに限定されていた。しかし、インドにおける生産力の強化、新モデル市場の拡大により最新機種の製造が推進され、2023年9月には最新モデルのiPhone 15が発売当初からインド製モデルとして市場に出回った。
現在、インド国内にはiPhoneの生産拠点が2カ所ある。インド南部タミル・ナドゥ州では2017年から鴻海(ホンハイ)精密工業傘下のフォックスコンが、インド南部のカルナータカ州では2023年からウィストロンが生産を開始している。同社は、2023年10月にインド現地のタタ・グループに買収された。
「ゼロコロナ政策」の影響で中国以外の拠点が必要に
アップルは、インドを「チャイナ・プラス・ワン」と位置付け、生産拠点を拡大するための場所として利用してきた。
アップルは過去15年にわたり、自社製品のほぼ全てを中国で生産してきたが、2022年11月に従業員と当局が衝突する出来事が起きた。約20万人の従業員を擁する中国河南省のフォックスコンの工場が、中国政府の「ゼロコロナ政策」によるロックダウンの影響を受けて、7日間にわたり封鎖されたのだ。これにより、iPhone 14 Pro/Pro Maxの供給には大幅な遅れが生じた。
こうした中国拠点に依存した生産体制のリスク分散化、サプライチェーンの多様化を狙い、アップルはインドでのiPhone生産を強化することにした。さらには、インドで製造拠点を強化すれば、インド国内市場で需要を成長させられる可能性もある。
※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の前半部分です。
(インドがiPhoneの一大生産拠点になる理由の続きを読む)
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