
AIを活用したイノベーションで、よりスマートで環境に優しいネットワークを構築
Build smarter and greener networks with innovation powered by AI
2025.03.07
Updated by WirelessWire News編集部 on March 7, 2025, 12:25 pm JST
Build smarter and greener networks with innovation powered by AI
2025.03.07
Updated by WirelessWire News編集部 on March 7, 2025, 12:25 pm JST
※本稿は、高岡晴生氏(ノキアソリューションズ&ネットワークス合同会社 技術戦略本部長 ストラテジー&テクノロジー。冒頭の写真)による寄稿です。
通信業界は、かつてない速さで変化を遂げています。信頼性の高い高速通信接続への需要は日々高まっている一方、消費電力を抑えながら複雑なネットワークを管理するという課題が生じています。
より多くのユーザーとデバイスが接続されていくにつれて、通信事業者はシームレスに機能するネットワーク運用を必要としています。しかし、なぜこの課題に、いち早く取り組まなければならないのでしょうか。
それは、従来のネットワーク管理方法では対応できなくなっているからです。システムは複雑になりすぎており、エネルギー効率の重要性はかつてないほど高まっています。自然環境の持続可能性が国家の優先事項である日本では、5Gの運用をより環境に優しいものにすることは、単なる良いアイデアではなく、必要不可欠なことです。
そこで登場するのがAIです。通信事業者がこのような要求に効率的かつ長期的に対処するためには、AI主導のソリューションが不可欠になっています。
現在の通信規格は、5Gから次の段階である5G-Advancedに急速に移行しています。これは単なるアップグレードではなく、画期的な進化です。5G-Advancedは、ネットワークのパフォーマンス、スケーラビリティ、エネルギー効率を向上させ、真に卓越したユーザーエクスペリエンスを提供します。5G-Advancedによりネットワークは飛躍を遂げますが、増加するネットワークの複雑さを管理し、5Gネットワークをコスト効率よく最適化するには、自動化だけでなく、AIを活用したソリューションが必要になります。
それではここで、AIが重要な理由を説明します。5Gネットワークの管理をチェスに例えると、複数の対戦相手と高速で対戦するようなもので、複雑で一挙手一投足が重要になります。5Gでは、ネットワークの複雑さを管理し、無線ネットワークの運用をコスト効率良く最適化するために、基本的な自動化以上の機能が必要になります。AIは、ネットワーク需要の予測や、リアルタイムのネットワークの調整に役立ちます。つまり、通信事業者はエネルギー消費を抑えながら、より良いサービスを提供できるのです。
例えば、5Gのサービスを都心部以外にも拡大するという課題を考えてみます。通信事業者は、日本のあらゆる場所に高速で信頼性の高い通信接続を提供するために懸命に取り組んでいます。AIを活用することで、遠隔地でもネットワークの効率性と応答性を維持でき、サービスエリアの拡大が可能になります。これは、デジタル格差の解消を目的とした取り組みに沿ったものです。
ノキアはAI RAN Allianceの創設メンバーとして、通信業界におけるAIがもたらす変革の可能性を高く評価し、AIを無線ネットワークに統合してその進化を加速させることに尽力しています。AI-RAN Allianceでは、業界と大学が産学連携で取り組むことで、知識を共有し、イノベーションを推進し、通信事業者がネットワークのスマート化だけではなく、エネルギーの効率化も視野に入れたAIソリューションを利用できる環境を整えようとしています。これは、エネルギーの消費量を増やさないでネットワークの成長を実現するという将来のあり方にとって、重要な取り組みです。例えば、ノキアのNVIDIAおよびT-Mobileとの提携は、AIとRANの統合を促進し、全体的な利用効率を向上させ、ネットワークアーキテクチャを再定義する方法を示しています。
AIがネットワーク管理をどのように変革しているかを示すもう1つの重要な例は、AIを活用したMantaRay SON(Self-Organizing Network)です。これは、AIを使用して人間の介入を最小限に抑えながらネットワーク・パフォーマンスを最適化するソリューションです。これにより、運用コストの削減、エネルギー管理の改善、通信サービスの信頼性の向上といった成果が得られます。
携帯ネットワークのエネルギーの約80%は、基地局サイトで使用されているという事実があります。ネットワークのエネルギー消費量は毎年10~30%増加しており、この管理方法を見付けることが極めて重要になっています。MantaRay SONは、サービスの品質を犠牲にすることなく電力の消費量を最適化することで、さらなる飛躍を遂げています。これは単なる理論上の話ではありません。例えば、サウジアラビアのSTCグループとの最近のプロジェクトといった事例では、MantaRay SONは通信事業者がエネルギーの使用量を削減し、高品質のサービスを実行し続けるのに役立ったことを実証しています。
MantaRay SONによって得られるメリットは、2050年までに二酸化炭素の排出量を実質ゼロにするという日本政府の目標と完全に一致しています。MantaRay SONのようなソリューションでは、通信サービスの需要と通信環境の確実性の間でバランスを取るために必要なツールを通信事業者に提供しています。そして、その恩恵を受けることができるのは日本だけではありません。環境に優しく、効率的なネットワーク運用を推進する国が増えている中で、MantaRay SONは世界中で有意義なソリューションとなりえます。
つまり、将来に備えたネットワークを構築するためには、その管理方法を見直す必要があります。AIは単なる技術ツールではありません。持続可能で効率的な5G運用を実現するためには、必要不可欠な要素です。
AIを組み合わせることで、通信事業者は複雑に変化するネットワークの需要をより効率的に処理し、エネルギーの持続可能性に向けて大きな進歩を遂げることができます。これは、通信事業者だけでなく、高速で信頼性の高い通信ネットワークを利用しているすべてのユーザーに役立ちます。そして、ビジネスチャンスの拡大、通信環境の改善、環境負荷の低減にもつながっていきます。