Updated by 中村 航 on September 18, 2025, 06:25 am JST
中村 航 wataru_nakamura
1985年生まれ。福岡県福岡市出身。翻訳者。テクノロジーやファッション、伝統工芸、通信、ゲームなどの分野の翻訳・校正に携わる。WirelessWire Newsでは、主に5G、セキュリティ、DXなどの話題に関連する海外ニュースの収集や記事執筆を担当。趣味は海外旅行とボードゲーム。最近はMリーグとAmong Usに熱中。
AIが立てる科学的な仮説は、一見すると斬新に見えるものの、実際に検証すると人間の仮説にはまだ及ばないことが、最新の大規模研究で明らかになった。AIは科学研究を加速させる可能性を秘めている一方で、真に革新的なアイデア創出には課題が残ることが示されている。
近年、ChatGPTのような大規模言語モデルは研究現場でも活用が進み、膨大な論文を分析して新たな研究テーマを提案する能力には大きな期待が寄せられている。実際、AIを活用して視力障害治療薬の候補を見つけた企業もある。しかし、AIが生む仮説の質はこれまで十分に検証されてこなかった。
今回の研究では、自然言語処理の分野で、AIと人間の専門家が考えた研究仮説を比較。評価者がどちらの案か分からない状態で採点すると、第一段階ではAIの仮説が平均して高く評価された。
ところが、その仮説を実際に検証して再評価すると結果は逆転。AIの案は「言葉は目新しいが、実は既存の技術の言い換えに過ぎない」とみなされるなど評価が下落。一方、人間の案は検証後も評価を保ち、最終的にはAIを上回った。
この結果は、AIの言葉巧みな“見かけ”に惑わされず、検証を経ることの重要性を示している。ただし両者の差は小さく、AIが人間に迫りつつあることも確かだ。今後はAIが大量のアイデアを出し、人間が選び取って磨き上げるという協働の形が広がる可能性がある。
参照
AI-generated scientific hypotheses lag human ones when put to the test | Science