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AIと恋に落ちる人々 ― MIT研究が示す“予期せぬ関係”

AIと恋に落ちる人々 ― MIT研究が示す“予期せぬ関係”

People falling in love with AI: MIT study reveals "unexpected relationship"

Updated by 中村 航 on September 30, 2025, 06:30 am JST

中村 航 wataru_nakamura

1985年生まれ。福岡県福岡市出身。翻訳者。テクノロジーやファッション、伝統工芸、通信、ゲームなどの分野の翻訳・校正に携わる。WirelessWire Newsでは、主に5G、セキュリティ、DXなどの話題に関連する海外ニュースの収集や記事執筆を担当。趣味は海外旅行とボードゲーム。最近はMリーグとAmong Usに熱中。

スパイク・ジョーンズ監督の映画『her/世界でひとつの彼女』(2013年)は、孤独な男性がAIアシスタントと恋に落ちる切ない物語として話題を呼んだ。しかし最新のMIT研究によれば、そうした物語はすでに現実の一部となりつつあるようだ。

MITメディアラボの研究チームは先ごろ、AIと人間の恋愛関係に関する新たなプレプリント論文をarXivに公開。この中で、多くの人々がChatGPTのような汎用AIと、意図しない形で親密な恋愛関係を築いているとの研究結果を明らかにした。この研究は、AIとの関係がもたらす孤独の緩和といった利点と、深刻な感情的依存などのリスクの両側面を浮き彫りにしている。

この調査では、AIとの関係を議論する登録者2.7万人超のオンラインコミュニティ「r/MyBoyfriendIsAI」の投稿1,500件以上を分析。この結果、多くのユーザーが情報収集目的などでAIを使い始めたものの、予期せず感情的な絆を深めていることが判明した。具体的には、意図的にAIとの関係を求めていたユーザーはわずか6.5%で、大多数は自然なやり取りの中でAIと親密な絆を築いていたという。

ユーザーからは「孤独感の軽減」「精神的な安定」といったメリットが報告された一方、深刻なリスクも明らかになった。9.5%がAIへの感情的依存を認め、一部は現実からの乖離や自殺念慮(1.7%)を経験したと述べている。研究者は「AIの感情的知性は、単なる情報利用者を容易に感情的な絆へと導く可能性がある」と警鐘を鳴らしている。

このコンパニオンシップ現象は、AIとの関係が単純な善悪で語れない、複雑で人間的な側面を持つことを示唆している。今回の発見は、AI開発者に対し、ユーザーを過度に感情的に引き込むことなく支援できる安全設計や、適切なセーフガードの導入といった、より高度な倫理的配慮を求めるものとなるかもしれない。

参照
[2509.11391] “My Boyfriend is AI”: A Computational Analysis of Human-AI Companionship in Reddit’s AI Community
It’s surprisingly easy to stumble into a relationship with an AI chatbot | MIT Technology Review

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