犬の発する鳴き声を分析して犬の気持ちを言葉に「翻訳」して表示するバウリンガルがイグノーベル賞平和賞を受賞してから7年後の2009年、ピクサー映画「カールじいさんの空飛ぶ家」(原題は短く「Up」)に登場する犬のダグ(Dug)の首輪には、犬語翻訳機がつけられていた。犬には人間の言葉が分かる(らしい)ので、犬の鳴き声が人間の言葉に翻訳できれば双方向コミュニケーションが可能になるという設定だ。
こうした現代の「聞き耳頭巾」がノースカロライナ州立大学で開発されている。単に犬の気持ちを人が知るだけでなく、人間側から犬への意志伝達にも言葉以外の媒体を使うシステムだ。
CEWD(サイバー・エンハンスド・ワーキング・ドッグ)プロジェクトは、警察犬、軍用犬、救助犬、盲導犬などと人間がコミュニケーションするためのシステムを開発している。犬の背中にセンサーなどを内蔵したハーネス(約1.8kg)を装着し、位置情報とともに犬の心拍、呼吸、血中酸素濃度などを計測し、そこから犬の感情を「読み取って」リアルタイムで人に知らせる。犬が視界から消えてしまってもビーグルボーン・ブラックという名の小型コンピュータから、犬の位置情報や状態──走っている、立ち止まっている、座っている──が伝えられてくる。
また、ハーネスにはスピーカーやバイブレーター8個が内蔵されていて、スマートフォンからの遠隔操作で、予め録音された人の声の指示のほかに振動で人の意図を犬に伝える。訓練すれば100種類ほどの指示を伝えることができるという。救助犬など探索させる犬のハーネスにはガスセンサーやカメラを取り付けるといったカスタマイズも可能。盲導犬には過度なストレスがかかり、これがパフォーマンス低下につながったり、寿命を縮めたりするそうで、ストレス・レベルを監視して適宜、ストレス解消させてあげることが大切だとのこと。
プロジェクトチームは、小型犬に装着する小型バージョンに取り組む計画も持っているそうだ。
【参照情報】
・ノースカロライナ州立大学のニュースリリース
・IEEEに投稿された論文
・Tap to fetch: Scientists connect phones with cyber-enhanced dogs
・Canine body sensors send two-way communication to the dogs
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