可視光通信の実用実験がスタート。ワイヤレスジャパン2014会場では関連展示も
2014.06.20
Updated by Yuko Nonoshita on June 20, 2014, 10:30 am JST
2014.06.20
Updated by Yuko Nonoshita on June 20, 2014, 10:30 am JST
「ワイヤレスジャパン2014」「画像センシング展2014」の期間中に行われたセミナー『LEDビーコンシステムによる屋内リアルタイムロケーションの見える化の取り組み』を紹介する。講師役のパナソニック エコソリューションズ社の近藤陽介氏からは、工場や倉庫、病院などで導入実験がはじまっているLEDを利用した光ビーコンを使ったロケーションモニターの事例が紹介された。
可視光通信の大きなポイントは、より精度の高い安定した位置精度が得られることと、もう一つ、通信しているかどうかが可視光で見えることにある。機器の設置も照明として使えるので違和感が無く、コストも抑えられる。さらに今回は、病院内で看護師やスタッフの作業をサポートする病院内自立搬送ロボット「HOSPI」を運用するという、近未来的な実証実験の事例も紹介された。
▼可視光通信を使って自立搬送ロボットをコントロールする実験では、部屋や階段の照明を使ってロボットが制御できることが証明された
ロボットはスマホなどでワンタップで呼び出し可能で、その通信に可視光通信が利用された。新潟大学との協力により行われた実証実験では、LEDビーコンによる3点測位でより精密に位置を計測し、ロボットがあやまって室内に入ったり階段から落下しないよう、照明の位置によってコントロールした。頭上からの照明を使って通信していることから通信がさえぎられにくく、結果的にスタッフにも好評だったという。
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続いて紹介されたのは工場の倉庫での利用事例である。従来、工場での作業効率は、作業員のスキルや経験に左右されていたが、可視光通信では、倉庫内で商品の位置を的確に見つけ、目的地への最短距離で移動し、さらにフォークリフトの事故を防ぐといったことも可能になる。自動搬送ロボットでも同様の機能があるが、レイアウトの変更に対応するには手間がかかるため、可視光通信を使う方がコストが抑えられる。倉庫内の照明による可視光通信とZigbeeルーターの無線を組み合わせた実証実験では、作業全般のデータがどれだけ収集できるかもあわせて検討されたが、結果は上々だったようだ。
▼倉庫内の照明と無線ルーターを組み合わせて作業員の状況をリアルタイムに管理する実験が行われた
可視光通信では、さらに複数のセンサーを複合化させることによって、より精密な位置情報の測定することもできるという。いろいろな利用方法があるが、まずは大阪の展示会で説明員にタグを付けて、40台のタウンライトと5台のスタンドを使って追跡する実証実験が行われた。ブースのどの位置にどれだけいて、どのように対応していたかをリアルタイムでモニタリングするというもので、今回は説明員が対象だったが、入場チケットにタグを組み込めば、来場者の行動もトレースが可能になるなど、利用先のアイデアは拡がる。
▼センサーを複合化させることで、対象となるタグをより正確にトレースする実証実験もはじまっている
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また、可視光通信はこうした大規模な使われ方以外に、もっと身近で手軽な使い方も可能なことが、展示会場では紹介されていた。展示会場内ではカシオが「ピカリコ」と名付ける、可視光通信とクラウドを組み合わせたサービスを紹介していた。仕組みとしては、色のついた光の点滅によって、それを受信したスマホや機器にコンテンツやサービスを表示するというもの。たとえば家電製品でトラブルが生じた場合、エラーを光の明滅で知らせ、それをスマホのカメラで見ると対応方法を説明するウェブサイトを表示させたり、コールセンターへ自動で電話をかける、といった動作をさせることができる。
マーカーとなる光は機種にもよるが小さくても反応し、LEDやディスプレイ、スポットライトなど、さまざまな光源にも対応する。バーコードのように印刷するスペースも不要で、長距離通信も可能になり、複数のメッセージや画像の配信もできるという。対応するデータは、クラウド側で管理できるので運営もしやすい。カシオでは自社さいとで、ピカリコの機能を使ってスマホに画像を配信するアプリ「ピカピカメラ」も公開している。
▼V2Xで総称される自動車市場で扱われるネットワークやセンサーの種類は増える一方で、ビッグデータ化が進んでいる
可視光通信を使った認識技術は、イベント管理とチケット販売サービスを手掛けるPeatixが、画面の色によってチケットを判断するColorSyncという次世代チケットの実験を始めている。プロモーションビデオでは、暗い場所で離れていてもチケットが確認できる、というシーンが紹介されている。このように、可視光通信はすでにいろいろなシーンでの応用が始まっており、手軽で応用範囲も広いだけに、今後はビジネスや業務用よりも身近な場所で目にすることが増えるかもしれない。
【関連URL】
・ワイヤレスジャパン2014
・カシオ ピカリコサービス
・ピカピカメラ
・Peatix ColorSync
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登録はこちらフリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」「DIME」「CNET Japan」「WIRED Japan」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。