20WPが個人情報保護を基本的人権と宣言したこと、米国での処方記録によるターゲティング広告の事例など、今週も非常に興味深い話題が多い。各ニュースの詳細については、原文のリンクを参照されたい。
制度・法律
人権意識の高い欧州では想定された動き。ただし、この宣言には法的な強制力や実効性はない。
主として米英によるスパイ活動に起因する個人の権利侵害に対して、EUの人権委員が介入を示唆している。
これまでの流れを進めていく方向だが、EU域外の機関・企業への圧力も強くなっている。
ビジネス
米国ではデータブローカーが法的に認められているが、薬局から処方記録を購入し利用しているというのには驚きしかない。
製薬会社が薬局での処方データに基づいたターゲティング広告を実施、現時点では合法だが強く批判する声も
Privacy Concerns Grow as Pharma Uses Data to Target Consumers
製薬会社が顧客ターゲット目的でデータ利用しており、プライバシーに対する懸念が高まっている。米国の製薬会社とネット企業は、薬局データをオンラインアカウントとリンクさせ、個人の健康状態と処方された薬に基づいて、密かにターゲティング広告を実施している。個人の氏名は削られ固有の番号に置き換えられるため、連邦政府のプライバシー法に適合しているが、反対の声は大きい。データの出所は薬局で、データブローカーが処方記録を購入して匿名化した上で利用しているが、高い精度で個人を追跡可能だという。
データセンターの設置場所の選定が電力や災害、気候といった物理的条件だけでなく、データに対する法的な枠組みにも左右されるようになっている。
米企業がEUのデータ保護に対応するためEU域内にデータセンターを増設、地域の雇用などにも好影響
EU Sees U.S. Firms Building More Data Centers in Europe
EUの新しいデータ保護規則の施行を前に、米国企業がコンピューティングデータセンターをEU内に増設する動きを見せており、IBM、グーグル、アマゾンが計画を公表済み。これはEUによるデータ保護強化だけでなく、米国に対する不信に基づくセーフハーバー協定の見直しの機運などに対応する動きとみられる。一方、データセンターの増加は産業振興や雇用などの面で効果もある。
調査・ケーススタディ
英ガーディアン紙によるトレンド予測。他にはネットの中立性、スノーデン事件の影響などのほか、英国議会の総選挙にともなうメディア規制論議などが含まれている。
2015年の注目トレンドは消費者プライバシー意識の強化、EU当局の影響力拡大、メディアやDMPの規制など
From net neutrality to copyright: media law trends for 2015
英国におけるメディアに関する2015年のトレンド予測。プライバシーに関しても引き続き大きな注目が集まり、消費者のオンラインプライバシーに対する意識が高まることで、忘れられる権利の影響がGoogle以外の企業にも広がると見られる。それを背景に欧州委員会とEU司法裁判所の影響力は拡大するほか、英国ではメディア規制を巡る官民の綱引きが激しくなる見込み。また、オンライン広告はDMPによる自動化が進むが、一方で規制強化が求められるようになるだろう。
アプリによる個人情報の収集への啓蒙活動が盛んだが、なかなか有効な手立てが打ち出せていない。
データ流通に関するルールが未整備だと、どういう事態が起きるかという良いサンプル。
モロッコではデータ保護規制が未整備のためECサイトは顧客情報を売買、同意を取っているサイトはわずか1%
Donnees personnelles: Un commerce juteux
モロッコで個人情報を考える会議が開かれ、同国の電子商取引において個人情報の売却が儲かる「商売」となっている現状について多くの議論が行われた。情報保護監視の国立委員会(CNDP)が2014年に行った調査によれば、モロッコのウェブサイトの1%しか情報収集と利用の合意を取っておらず、80%のケースで同意を求める表示がどこにもない。