アクシオム社CPOに聞く、「データブローカー」事業の実態(前編)
テーマ6:「名簿屋」問題を改めて考える
2015.02.18
Updated by 特集:プライバシーとパーソナルデータ編集部 on February 18, 2015, 12:00 pm JST
テーマ6:「名簿屋」問題を改めて考える
2015.02.18
Updated by 特集:プライバシーとパーソナルデータ編集部 on February 18, 2015, 12:00 pm JST
ベネッセ事件以降、日本では「いわゆる名簿屋」が注目を集めた。一方米国では、FTC(連邦取引委員会)の厳しい法執行の下、個人情報の売買に関する適正化が図られつつある。インターネット登場以前から事業を手がける第一人者として、業界の適正化やコンプライアンスをリードしてきた、アクシオム社のジェニファー・バネット・グラスゴーCPO(チーフ・プライバシー・オフィサー)に、事業の実態と将来展望をうかがった。
──貴社はいまどのような事業を展開しているのですか?
グラスゴーCPO(以下グラスゴー):アクシオムは、米国、欧州、豪州、ニュージーランドでは「データブローカー」(個人に関する情報を収集し、販売する企業)としての事業を行っており、金融から小売りまで、あらゆる消費者と接する企業にサービスを提供しています。ただし現在は、アジア(日本も含む)では本格的な業務を実施しておらず、日本ではまだデータブローカーとはいえませんね。
──たとえば米国では具体的にはどのような業務をしているのでしょうか?
グラスゴー:顧客企業による市場の理解を支援し、企業の製品とサービスに関する有望な最終顧客を見極め、オフラインとオンライン両方の世界で顧客にリーチすることを支援することが、主な業務内容です。具体的には、マーケティング、データ解析、調査サービスがあります。
現在は様々な大企業群と提携し、データを通じた共同作業と、当社の顧客企業が顧客にリーチするための支援をしています。たとえば世界的な大手広告主に対してデータを販売しており、彼らの市場理解に役立ててもらっています。
──貴社がデータを売買する際、取引先やデータの品質について審査を行いますか?行っているとしたらどのような手続きや基準を適用していますか?
グラスゴー:データ連携の条件を定義するのは、米国由来の基準も多くありますが、世界的にも検討が進んでいます。当社がデータを販売する地域では、顧客企業にデータを販売する前には、必ず購入を希望するデータを必要とする正当な企業であることを確認するなど、資格をチェックしています。
たとえば米国では、ベタービジネスビューロー(Better Business Bureau、以下BBB)という機関があり、消費者からの様々な苦情申し立てを受け付けています。こうしたBBBのような機関で企業をチェックし、その企業について多くの苦情が来ていないかを調べるのです。こうした当該企業のチェックは、当社がデータを購入する場合も同じです。
──そうした基準に照らして、取引が適当でないと判断した場合、データの取引をしないという判断をすることはあるのでしょうか?
グラスゴー:もちろんです。そうした場合はデータの取引を停止します。
──見極めが難しい場合もあろうかと思います。BBBのような外部機関への照会以外に、貴社の中でも基準が制定されているのでしょうか?
グラスゴー:はい、当社独自の基準はあります。たとえば米国の場合、当社はその会社が正当で実態のある会社であることを確認します。そしてその事業について適切な規制当局に照会し、事業に必要な登録や認可を受けているかを確認する。また現在は誰しもがウェブサイトを有しているので、そうした公開情報を参考にすることもあります。
当然ですが、こうした手続きや、チェックする事項が入手できるかどうかは、国・地域によっても異なります。私たちが考える限り、米国のアプローチは具体的かつ堅固で、こうした方法が未整備な地域では、米国での方法を今後広めたいと思います。
===
──米国でのプロセスのポイントを教えてください。
グラスゴー:やはり前述したBBBの存在が大きいでしょう。消費者は、倫理的なビジネス慣行をしていないと思われる企業に関する苦情を、BBBに寄せることができます。そして我々企業は、そうした苦情をチェックすることができる。もしそこで悪い評価がついていなければ、きちんとした企業として承認された証になります。
BBBの他には、業界団体の存在も大きいですね。たとえばダイレクトマーケティング協会(Direct Marketing Association、以下DMA)や、デジタル広告アライアンス(Digital Advertising Alliance、以下DAA)なども、消費者からの苦情をはじめ、当該分野の企業を常に調べています。そうした業界団体に苦情が寄せられている場合、その企業とのビジネスを停止する結果になります。
──貴社に消費者から異議申し立てがあった場合は、どのように対応していますか?
グラスゴー:個人からの苦情はすべて大変真摯に受け止めています。彼らに詳細を確認し、適切な方策を決定します。もし個人がアクシオムのテクノロジーやデータによってマーケティング目的の勧誘を受けたくない場合、様々なオプトアウトの方法をお教えしています。
たとえば当社はウェブサイト www.aboutthedata.com を設けており、個人がどのようにデータがマーケティング目的で利用されているかを学び、また我々が保有するデータを確認することができます。そこでは、そのデータを修正・削除したり、もしくは完全にオプトアウトしたりできます。
おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)
登録はこちら情報通信技術の発展により、生活のあらゆる場面で我々の行動を記録した「パーソナルデータ」をさまざまな事業者が自動的に取得し、蓄積する時代となっています。利用者のプライバシーの確保と、パーソナルデータの特性を生かした「利用者にメリットがある」「公益に資する」有用なアプリケーション・サービスの提供を両立するためのヒントを探ります。(本特集はWirelessWire News編集部と一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)の共同企画です)