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海外で食べて行けるエンジニア、食べられないエンジニア

2012.12.03

Updated by Mayumi Tanimoto on December 3, 2012, 05:58 am JST

このところ、一度海外に出て働いてみたい、というエンジニアの方や、通信およびITで管理業務などに関わる方から相談を受けることがあります。

通信やITは世界中どこに行ってもやることは同じなので、色々な国を回って仕事しやすい職種なのですが、はやり、他の国でも食べて行ける人、食べて行けない人というのはいます。

簡単に言うと、外でも食べて行ける人は「自分で手を動かして何かできる人」です。

コーディングできる、設計できる、管理の仕組みを考えられる、コストカットした機材の調達の仕組みを考えられる、人員管理がうまい、プロジェクト管理できる、監査の仕組みやドキュメントを作れる、戦略を作って実行できる、という様な「自分で何かができる」人です。

反対に、「これは食べて行けない」という典型例。それは、日本国内の大手ベンダやユーザー企業勤務で、下請けや孫請けへの「丸投げ」しかできない「エンジニアもどき」や「SEというなんだか良くわからない仕事をやっている人」「仕事が部長や課長」という人々です。

日本では、残念ながら、通信もITも業界の仕組みは「ゼネコン体質」です。大手がコネやら知名度で仕事を取って来て、それを、下請けや孫請け、そのまた下請けに安い値段で丸投げして、利ざやを抜いて儲けるって奴です。

偉いのはお客、丸投げは当たり前だから、お客様側の「気持ち」を汲み取って、なんとか仕事をしなければいけないのは下請けの方です。これを長年やっているので、お客側は、要件定義をきちんと書いたり、妥当なスケジューリングで下請けに仕事を出したり、ということができません。

要するに、お客として「絶対にやらなければならないこと」ができないのです。

同じことを、日本の外でやったらどうなるか?特に契約社会のイギリスや大陸欧州や北米で。

「要件定義を書けって?それは俺の契約にはいってないぞ」
「お客なのに自分が何が欲しいかわからないの?」
「頭がおかしいじゃないか?」
「なんて傲慢なカスタマーだ」

と言われて、業界内にあっという間に噂が広まります。「要件定義すらできない客」=「無能な客」=「面倒だからつき合わない方が良い」と言われて、仕事を受けてもらえなくなります。日本の外では下請けは下請けではなく「仕事をやって頂く専門家」なので、要件や費用のことを明確にし、的確な依頼をするのは「お客として最低限の礼儀」なのです。

残念ながら、日本には、会社としても、個人としても、そういう礼儀がある人が多くはありません。そして、そのような「礼儀」があることを知らない人がいます。下請けに丸投げし、意図を汲み取れと「テレパシー」を送り、読み取れないと「空気が読めないバカ」と裏で言います。

そういうのは態度で伝わるので、下請けや、個人事業者として働いている人の恨みをかい、あとで、訴訟や手抜き作業などの痛い痛いオシオキとして自分に跳ね返って来ます。

日本では大手で丸投げしている人が「勝ち組」の様に言われていますが、外に出るとそうではないのです。日本の学歴も、有名会社に勤めていたという経歴も通用しません。会社名ではなく「何ができるか」しか見ませんから。

そういうわけで、私に相談してくる人は「私は何会社に勤めています」というのは、いい加減に辞めて頂きたいわけです。

あなたは一体何ができて、どういう付加価値があるんですか?

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。