○3Gユーザー獲得のため中国でもキャリアが中心となって様々なサービスや施策を行って来ていることは、前回までの記事で紹介したが、今回は各社が特に注力しており市場が急成長しているモバイル・ペイメント(携帯電話による支払い)について紹介したい。
先日、工信部から「2010年通信業界10大キーワード」が発表された。モバイルインターネット、スマートフォン、クラウドコンピューティングなどとともに、モバイル・ペイメント(中国語表記:移动支付)が含まれている。
中国の市場調査会社大手"易観国際"によると、中国のモバイル・ペイメントユーザーは1億人に達し、その市場規模は前年比50.8%増の30億元(約376.4億円)になっているとのことである。また、2011年、2012年にはそれぞれ57%、97%増が予測されているなど急成長が望める市場である。
モバイル・ペイメントの中でも、いわゆるおサイフケータイは最近になってとみに中国モバイルキャリア各社が力を入れている(一部入れ始めている)サービスである。
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中国移動(チャイナ・モバイル)、中国聯通(チャイナ・ユニコム)、中国電信(チャイナ・テレコム)がそれぞれ独自にサービス展開を始めている。
▼中国移動の携帯電話支払い専用ページ。光熱費などの支払いが可能なこともアピールしている。
中国移動は20,000社にものぼるパートナーと協業し、各社Webサイト上で中国移動の携帯電話支払いが可能になっているという利便性をアピールするとともに、2010年末までに中国移動の携帯電話支払いを利用して購入すると等しく5%引きになるというキャンペーンも行っている(キャンペーンサイト)。
▼中国電信の携帯電話支払いの専用ページ。各種優遇政策、景品などを準備して促進を図っている。
中国電信は「翼支付(Bestpay)」のブランドで専用ページを立ち上げ、各地の支社が独自のユーザー獲得施策を行っている。例えば浙江省の支社では、期間内に申込を行えばiPadが抽選であたるキャンペーンをが行っている。福建省、安徽省の支社では、補充した金額によって景品を進呈するなどのユーザー獲得のための促進策を行っている(各支社のキャンペーン紹介ページ)。
中国聯通に関しては携帯電話支払いの専用ページは見つからなかったが、2010年11月には北京、上海、広州、重慶の4大都市で正式にサービスが開始され、逐次の中国全土展開に向け、各種銀行との提携やパートナー獲得の施策などが粛々と行われている。
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日本の「おサイフケータイ」では、対応した端末にRFIDチップが埋め込まれているが、中国のおサイフケータイは、従来のSIMカードと同じ形状で、RFID機能が搭載された「RF SIM」を使用する。中国移動の例をとると、まず中国移動の直営店に出向き、SIMカードをRF SIMに交換する。その後、アカウントの開通手続きを行うことで、光熱費の支払いや、上海などの都市圏に限定されるが、地下鉄・バスなど一部の交通機関で利用が可能になる。
しかしながら筆者が上海や南京、安徽省の都市でおサイフケータイとして携帯電話を利用しているユーザーを見かけることは非常に少ない。利用という点では、2010年は開始及び準備の段階で、2011年から本格的な浸透が始まっていくように感じている。
3大モバイル通信キャリアの推進、今後の利用可能なサービスが増えるに連れて利用者は増えていくのであろう。
街中のショップではあまり見かけないおサイフケータイだが、オンラインショッピングを携帯電話で利用するユーザーは増えているようだ。
中国最大のオンラインショップショッピングサイト「タオバオ(中国名:淘宝)」では、携帯電話ユーザーを囲い込むべく、各種携帯電話に専用ソフトを提供したり、果てには自社ブランドの携帯電話「タオバオ携帯(中国語表記:淘宝手机)」も2010年中頃から提供し始めている。
▼タオバオの自社ブランド携帯電話専用ページ。タオバオ携帯の実機紹介や優位性などが書かれている。
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支払いに関してはタオバオでは一般的に同社グループの「支付宝(アリペイ)」というオンライン決済システムが利用されており、当然ながらこちらもモバイル端末対応を強化している。
▼支付宝(アリペイ)のモバイル専用ページ。手続き方法が書かれていたり、専用ソフトのダウンロードが行える。
中国インターネット情報センター(CNNIC)の最新情報によると、現在中国のインターネットユーザーは4億2,000万人を超え、うちモバイルインターネットユーザーは全体比率の66%にものぼる2.77億人になり、2011年には3億人を超えることが確実視されている。
一方、中国商務部が2010年8月30日に発表した「中国Eコマースレポート(2008-2009)」では2009年の中国Eコマースの市場規模は3.8兆元(≒48兆円)に達し、インターネットユーザーの急速な伸びを考慮すると2010年以降も市場が急成長していくであろうことが言及されている(参考資料)。
現時点、モバイルユーザーに特化したEコマース市場の規模は筆者の知りうる限り発表されていないが、コンサルティング会社の清科集団によると2010年末には携帯電話で支払いをするユーザーは5,578万人になることが予測されている(参考資料)。
おサイフケータイに関してはまだまだこれから、という状況ではあるが、携帯電話を利用したオンラインショッピングはモバイルインターネットユーザーの比率、伸び数を考慮しても2011年も有望な市場と感じる。
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