米携帯通信大手のベライゾン・ワイアレス（Verizon Wireless：以下、ベライゾン）は1日、クレジットカード大手のアメリカン・エクスプレス（American Express：以下、アメックス）と、モバイル決済の分野で提携したことを発表した。これにより、ベライゾンのユーザーはアメックスの決済プラットフォーム「Serve」を利用した支払いが行えることになる。

▼Serve

アメックスの「Serve」は、スマートフォンやタブレット端末を使った決済用の仕組みで、オンラインと実店舗のどちらの取引でも、電話番号とクレジットカードのPINコードの入力だけで支払いが可能になるというもの。先月には、スプリント・ネクステル（Sprint Nextel）が同プラットフォームの採用を明らかにしていた。

ベライゾンは今年6月、アメックスが出資し、携帯電話を利用した支払いシステムを提供するペイフォーン（Payfone）と共同で、独自のモバイル決済サービスを開始すると発表。いっぽう、アメックスは4月にペイフォーンとServeを統合する計画を発表しており、今回の両社の提携で、これらがつながることなった。またアメックスは、ソーシャルネットワークのフェイスブック（Facebook）や位置情報関連サービスのフォースクウェア（Foursqure）、SCVNGRなどとも提携しており、今後これらの企業がServeに絡んでくる可能性もある。

ベライゾンは、今後数か月かけて自社の端末でServeを利用できるようにしていく予定。ただし、ベライゾンのユーザーがServeで自分のアカウントを作成したり、オンライン小売店がServeを決済手段として組み込む必要があるなど、実際に利用されるまでにはいくつかの課題もあるという。

また、ベライゾンはAT&T、T-モバイル（T-Mobile USA）とともに「ISIS」という合弁会社を立ち上げて、NFC（Near-Field Communications：近距離間無線通信）技術を利用した決済についても取り組みを進めている。ただし、この取り組みは実証実験の開始が来年からとなっており、実現までにはしばらく時間がかかるとみられている。

モバイル決済分野は、両社のほかにも、マスターカード（MasterCard）やシティグループ（Citi Group）と共同でNFC技術を利用したプロジェクトを進めるグーグル（Google）、同じくNFCを利用し、ワンクリック決済との連動やソーシャル・ネットワーク・サービス内での取引など包括的な決済方法を目指すビザ（Visa）、イーベイ（eBay）傘下のペイパル（PayPal）など、さまざまな業界のプレイヤーがしばらく前から活発な動きを続けている。

また同日には、スマートフォンやタブレットを使ったクレジットカード決済サービスを運営するベンチャー企業のスクウェア（Square）が、1日あたりの決済処理金額が400万ドルを超えたと発表していた（5月末時点の金額は1日あたり3億ドルだった）。

米調査会社のジュニパー・リサーチ（Juniper Research）が7月はじめに発表した予測によると、世界のモバイル決済の市場規模は今年の2400億ドルから2015年には6700憶ドルまで拡大する見込みで、とくに東アジア（中国を含む）、西欧、米国の3つの市場がそのうちの75%を占めることになるという。またNFCを利用したモバイル決済の金額は、2014年に全世界で5000億ドルに達することになりそうだと同レポートは述べている。

【参照情報】
・Verizon Wireless and American Express Find an Intermediary Path to Mobile Payments - AllThingsD
・AmEx Serve digital wallet is now on Verizon - GigaOM
・Square Now Processing $4 Million In Mobile Payments Per Day - TechCrunch
・Mobile Payments To Triple To $670B By 2015; Digital Goods Will Represent 40% Of Transactions -
・ベライゾン、ペイフォーンと共同で独自のモバイル決済サービス提供へ
・いよいよ正式発表へ - グーグル、モバイル決済プラットフォームを26日にお披露目
・アメックス、モバイル・ペイメント分野で新たな布石 - ベライゾンなどと新興企業に出資