複数キャリアのネットワーク共有によるLTEサービスの提供に向けたロシアの動きについて、価格面でハードルが生じている。
ヨタ(Yota)ブランドで現在、WiMAXを提供しているスカーテル(Scartel)は、2010年7月に同社のWiMAX向け周波数をLTEに転用することで規制当局の合意を取り付けた。これまでLTEにフィットする周波数を持っていたのはロステレコム(Rostelecom)1社のみであったが、2011年3月には他の3キャリア(MTS、ビンペルコム(Vympelcom)、メガフォン(Megafon))と共に、ヨタによるLTE網構築運営事業に集結した。各社はヨタから周波数とLTE設備を借り受ける。2014年には、ヨタ(つまりスカーテル)の74.9%を持つテルコネット・キャピタル・ファンド(Telconet Capital Fund)はスカーテル株を全株売却し、残り25.1%を持つロシアン・テクノロジー(Russian Technologies)が持株率を20%に引き下げるため5.1%を売却する。売り出される80%を携帯会社4社が20%ずつ購入するオプションを持つというのが3月に打ち出された枠組みだ。
ところが8月下旬になってヨタが自社を10億米ドル(1ドル=76.97円換算だと約770億円)と高く評価したことが他社の反発を買っているという。ロシアの携帯電話の普及率は2011年7月で154.5%に達し、モスクワやサンクトペテルブルグでは210%近くに達し、各地で各社は激しい競争を続けている。今後予想されるモバイル・ブロードバンド需要に対応するためには、設備投資を抑えるヨタ連合案は渡りに船だったようだ。しかし、金額面だけでなく、いくつかの要因からこの取り組みが破談になる可能性が出てきている。
ヨタとロステレコム以外のキャリアがLTE向けの周波数を個別に獲得するためには、現在、軍事利用されている周波数帯が整理される必要があった。しかし、国家周波数委員会(State Commission for Radio Frequency(SCRF))が8月下旬になって出した方針が事態をさらに複雑にしている。MTSとメガフォンのそれぞれの子会社であるComstar UTSとSynterraの2社がモスクワで保有しているWiMAX用周波数を手放すならば、代わりにLTE向け周波数を割り当てるという。この周波数帯は今年後半にオークションが予定されていたもので、オークションを待たずに割り当てられるとすれば、2社にとっては魅力的なことに違いない。
ちなみに、ケニアでも複数のキャリアやベンダが構成するコンソーシアムにLTE周波数を割り当て、ホールセールで提供する動きがある。
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