既報の通り、スマートフォンとタブレット端末の特許侵害をめぐるサムスン（Samsung）とアップル(Apple)の争いは世界各地の法廷で続いているが、18日（韓国時間）にはサムスンが、アップルからこの秋に投入予定と噂されている「iPhone 5」に関し、韓国国内での販売差し止めを求める訴えを起こす準備を進めているとの話が浮上している。

韓国のKorea Timesが、匿名のサムスン上級幹部の話として伝えたところによると、同社では同国内でのiPhone発売の直後に、この訴えを提出する計画が進んでいるという。この幹部は同紙に対し「サムスンが持つ無線通信技術の特許をアップルが侵害しているという訴えを韓国の法廷に出す。そうなれば、アップルがわれわれの特許（取得済み技術）を使わずに『iブランド製品』（iPhoneおよびiPad）を販売することは、これらの製品からモバイル通信機能を外さない限り、不可能になるだろう」と述べたという。

また、別のサムスン幹部は「ドイツの法廷で勝利を手に入れることができれば、それがわれわれにとって大きな打開の糸口となり、またiPhone 5のような製品に対する他の取り組みも同様のものとなるだろう」と自信を示したという。

サムスンはこれに先立つ16日（欧州時間）に、ドイツのデュッセルドルフ地裁に対し、9日に下されていた同社製タブレットのドイツ国内での販売を禁じる差し止め命令を覆すよう求める訴えを提出。またオーストラリア（シドニー）の連邦法廷でも自社の無線通信関連特許がアップルに侵害されているとする訴えを起こしていた。

ドイツではアップルの主張を認める形で、サムスンのタブレット端末「Galaxy Tab」の一部の製品に関し、この販売差し止めを命じる判定が数度にわたって下されており、サムスンではこれを不服としてデュッセルドルフの高等地裁に控訴を行っていた。また豪での裁判では「iPadのデザインなどに関する特許が侵害された」とするアップルからの訴えが出され、サムスンはこの争いの結果が出るまで、同国向け「Galaxy Tab 10.3」の投入を見送ることに合意していた。

Korea Timesによれば、韓国におけるiPhoneの累計販売台数は約310万台で、携帯通信事業者ごとの内訳はKTが約270万台、SK Telecomが約40万台だという。

また同紙では、iPhone 5に採用されるコンポーネントの詳細について記しているが、それによると同製品にはLGディスプレイ（LG Display）製のLDC（タッチスクリーン）、LGイノテック（LG Innotek）製の800万画素カメラ、サムスン製のNANDフラッシュメモリ、同じくサムスン製のデュアルコア「A5」プロセッサーに加え、NFC（Near-field communication）チップも搭載される可能性があるという。

なお、iPhoneへのNFCチップ搭載については、1月下旬にBloombergがその可能性に言及したコンサルタントの話を伝えていたが、5月中旬には「iPhone 5では見送りの可能性が高い」という金融系アナリストの見方が報じられていた。

【参照情報】
・Samsung seeks sales ban on Apple's next iPhone - The Korea Times
・Samsung wants to impose iPhone 5 ban in Korea ahead of official launch - 9to5Google
・Samsung planning legal offensive against Apple's unreleased iPhone 5 - Apple Insider
・Samsung Widens Patent Dispute With Apple - WSJ.com
・Samsung Seeks to Lift German Sales Ban, Sues Apple in Australia - Bloomberg
・「アップル、2種類のiPhone投入」（金融系アナリスト） - 株価過去最高に
・世界各地に飛び火する、アップル対サムスンの法廷闘争 - 新たに仏、英でも
・サムスン、欧州でまたも黒星 - 独地裁、「Galaxy Tab」の販売を禁じる判定
・サムスン、アップルに譲歩 - 特許問題解決まで、豪での新型「Galaxy Tab」投入を見送り
・アップル、新型iPhoneへのNFCチップ搭載も見送りか - 米証券アナリスト予想