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先月末に行われたアップル（Apple）・モトローラ（Motorola）間の特許権侵害をめぐる裁判で、両社の訴えを退けたリチャード・ポズナー（Richard Posner）連邦裁判所判事が、同裁判についてたずねたロイター（Reuter）の取材に対し、「多くの業界で特許権による保護が本当に必要かどうかを考え直す必要がある」との考えを示した。

同判事は、製薬業界をはじめ多くの研究開発費用が必要となる業界においては、特許権保護の必要性を認めている。しかし特許権による保護がなくとも先行者が多くの利益を得るテクノロジー業界では、特許権の必要性自体に疑問が残るとしている。また、スマートフォンなどの端末には、特許権で保護された無数の機能や技術が使われている現状を指し、「特許の増えすぎは問題だ」と指摘している。

先月のアップル・モトローラ間の裁判では、動画ストリーミング再生に関するアップルの特許権をモトローラが侵害しているとの主張が展開されたが、同判事はこの特許権が「アップルが動画ストリーミング再生を独占するためのものではない」としてこの主張を退けていた。

また同判事は、端末の販売を禁止することは消費者にとってメリットをもたらさないと述べるとともに、動画再生技術などの個々の機能を理由に携帯端末自体の販売を禁止するべきではないと結論づけていた。

同判事は今回の取材で、法廷で争いを繰り広げる企業に非があるわけではなく、「ジャングルで生き残るためにあらゆる手段に頼る動物と同じように」、法によって与えられた機会を最大限に活用しているに過ぎないとも述べている。

ポズナー判事は、知的財産権に関する問題などを専門的に扱うシカゴの連邦第七巡回区控訴裁判所の判事で、シカゴ大学ロースクールで教鞭をとる「シカゴ学派」の重鎮の1人として知られる人物。かつてマイクロソフトと米司法省などが争っていた反トラスト法関連の訴訟では和解交渉の特別調停人を務めた経験もある。

なお、同判事がアップル・モトローラ両社の訴えを退けた4日後の先月26日、カリフォルニア地裁のルーシー・コウ（Lucy Koh）判事が、サムスン（Samusung）の「Galaxy Tab」の販売仮差し止めを命じる判決を下している。その数日後、同じくコウ判事が「Galaxy Nexus」についても販売仮差し止め命令をくだしており、サムスンはこれらの判決を不服としてワシントンD.C.の連邦巡回区控訴裁判所に控訴している。

またこの控訴裁の判決確定まで両製品の販売仮差し止め命令発効を保留するよう求めていたサムスンの訴えは、いずれもコウ判事から退けられたため、「Galaxy Nexus」を販売していたGoogle Playサイトでは同製品のすでに買えなくなっている。

【参照情報】
・Judge who shelved Apple trial says patent system out of sync - Reuters
・In wake of Apple v. Motorola, Judge Posner speaks: 'it's not clear that we really need patents in most industries' - The Verge
・Judge Posner: Maybe There's No Reason For Software Patents - Forbes
・Motorola and Apple are each given one last chance before Judge Posner to show validity of suit - phoneArena
・Will Success Spoil the Chicago School? - Businessweek
・米連邦裁判事がアップルの訴えを却下 - 対モトローラ特許訴訟
・「特許は自己防衛にしか使わない」-- ツイッター、新たな取り決めを発表
・Galaxy Nexus、米での販売中止に - 仮差し止め命令発効へ、グーグルは回避策投入予告
・【図・グラフ】アップル vs Android陣営 - 特許をめぐる「世界大戦」概略図（BW誌）