フェイスブック（Facebook）のマーク・ザッカーバーグ（Mark Zuckerberg）CEOが米国時間21日、全世界にインターネット環境をもたらすことを目指す団体「internet.org」の設立を発表。現在まだインターネットに接続できる環境にない世界の約3分の2（約50億人）の人々を対象に想定した試みとしているが、立ち上げメンバーのなかにはこの分野で大きな影響力をもつ既存の通信事業者各社、それにグーグル（Google）やアップル（Apple）などの名前は見当たらない。

インターネットへの接続を基本的人権とするザッカーバーグ氏らは、より安価なインターネットの接続手段の開発などを通じて、全世界の人々にインターネット環境を提供することを目指すとしている。Internet.orgの設立メンバーには、フェイスブックのほか、サムスン（Samsung）、エリクソン（Ericsson）、ノキア（Nokia）、クアルコム（Qualcomm）、メディアテック（MediaTek）の各社が名を連ねている。

参加企業各社は、スマートフォンを含む安価な通信手段の開発、より少ない帯域幅でデータを送受信できるようにするための圧縮技術の開発、対象地域でのインターネット回線事業を促進するビジネスモデルの構築などを進めていくという。ただし、今後の具体的な取り組みやそれにかかる資金の規模および目標の実現方法、スケジュールなどの詳細は明らかにされていない。

先進国でのインターネット接続市場や各種デバイス市場が成熟に向かうなか、新たな成長市場として新興市場に注目が集まっている。こうした国々ではインターネット環境が整っていない地域も多く、たとえばグーグル（Google）では気球を使ったインターネット網を構築するプロジェクト「Loon」を発表している。

フェイスブックはこれまでに、フィリピンなどで同社サービスの利用にかかるデータ通信料を肩代わりし、ユーザーが無料で使えるようにする取り組みを進めてきた。こうした取り組みが呼び水となり、通信事業者にも新たなデータ収入がもたらされているとして、internet.orgが今後進める取り組みが通信事業者にとってもプラスに働くと、ザッカーバーグCEOは自信を示してるという。

またフェイスブックはデータセンター関連の「Open Compute」プロジェクトの取り組みを通じて、効率的なサーバーの開発につながる参加者間の情報共有などを進めてきてもいる。

いっぽう、この話題に触れたComputerworldでは、internet.orgの掲げる目標が仮に実現できるとしても、最低でも10年以上はかかるとする複数の専門家のコメントを紹介。またGigaOMでは、internet.orgが本当に現状を変えたいのであればホワイトスペースの活用やさまざまな新技術の開発などを通じ、高価な周波数帯域を利用する既存の通信事業者に極力依存しない方法を模索する必要がある、などと指摘している。

なお、グーグルのProject Loonに対しては、現在自らの財団を通じて新興国の医療問題改善に取り組むビル・ゲイツ（Bill Gates）氏が、「マラリアで死にかかっている人にとっては（ネット接続できても）役に立つかどうかはわからない。子供たちが下痢をしているときに、それを緩和するウェブサイトはない（略）。医療機関や学校をネットでつなぐことはいいことだが、本当の低所得国ではあまり効果はない」などとする批判的な見方を示して話題を集めていた。

【参照情報】
・Technology Leaders Launch Partnership to Make Internet Access Available to All - Facebook
・Is Connectivity A Human Right?（PDF） - Mark Zuckerberg
・Facebook Leads an Effort to Lower Barriers to Internet Access - NYTimes
・Mark Zuckerberg wants to bring the entire world online with Internet.org - The Verge
・Zuckerberg's goal of connecting 5B people could take 20 years - Computerworld
・If Facebook's internet.org effort really wants to shake things up it should bypass the carriers - GigaOM
・Bill Gates on His Foundation's Health and Education Campaigns - Businessweek