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南アフリカがAIが発明した製品に特許を与える

South Africa grants a patent to AI's invention

2022.09.27

Updated by Mayumi Tanimoto on September 27, 2022, 15:59 pm JST

日本では、AIがどの程度人間に近付けるのかということが議論されていますが、このところ海外では「AIを自然人として認めるべきか?」が法的な議論として話題になっています。

そのきっかけの一つがStephen Thaler博士が、自らが開発したAIであるDABUS ((Device for the Autonomous Bootstrapping of Unified Sentience)ロボットが「発明した」とされる「食品を入れる容器」と「フラッシュライト」(Food container and devices and methods for attracting enhanced attention)の特許を、AIの代理人として特許申請した件です。

開発者が「人間」ではなく「AI」で、「AIが特許所有者」になるわけです。通常、特許の申請ができるのは「自然人」なので、これは大きな話題になっています。

Thaler博士は、アメリカ、EU、オーストラリア、ニュージーランドなどの様々な国で同様に申請していますが、いずれも「申請は自然人に限る」と却下されています。しかし、なんと南アフリカは、この特許を認めました

非常に興味深いのは、この特許が申請が認められたポイントの「発明者は人間に限らなくても良い」という点です。これは、技術の発展を推進するためには特許法は柔軟であるべき、という考え方が根底にあります。

この南アフリカの決定を理解するには、オーストラリアの裁判所での議論も参考になります。特許法で定義する「inventor」(発明者)という単語は、「動詞から派生した言葉で動作を指示し」、「人間」がやるとは定義されておらず、inventor」は「柔軟に判断されるべき」と議論されています。

イギリス知的財産庁には、2018年10月と11月に、Thaler博士が代理人となって、DABUSが発明したこの食品の入れ物の特許が申請されていますが、認められなかったために控訴されており、現在、最高裁で審議中です。イギリスでの決定は、他国での議論にも大きな影響を及ぼすでしょう。

この特許に関する各国での議論は、特許界だけではなく、自動運転や兵器、システムの世界にも波及するでしょう。判断力と知能を持ったAI自身に責任能力はあるのか、AIが作り出す付加価値の富の所有権は誰にあるのか、AIによるエラーは誰が責任を持つのか、といった点です。

例えば自動運転で、AIが事故を起こした場合の責任を誰が負うのか? AIが戦争犯罪を犯した場合の責任は究極的には誰が負うのか?

こういった議論は、日本ではまだほとんど話題になっていませんが、倫理的な側面も踏まえて早急に議論を進めるべきでしょう。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。