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どこへ行く、AIアート?

2023.10.12

Updated by WirelessWire News編集部 on October 12, 2023, 07:11 am JST

人は冗談や皮肉をどのように理解しているか

日々の会話の中で、我々はどうやって冗談や皮肉といった、少しひねった表現を理解するのだろうか。この問いに対して、斬新な答えを提供したのは、言語哲学者のグライス(P.Grice)である。

彼の主張によると、ひねりのない普通の会話では、我々はある種の標準的なラインを守っている。彼はそれをカント(I.Kant)のアプリオリについての議論に従って、量、質、関係、様相という四つの公準に従うものとした。面白いのは、この公準が破られると、そこにいろいろなニュアンス、あるいは含意(implicature)が生じるとグライスが主張した点である。

例えば、普通に会話する時は、我々はそこそこ常識的な量をしゃべるものだが、もし誰かがそこで、異様に短い返事(あるいはその逆)をしたとすると、聞き手はそこに何か普通ではないものを感じる筈である。それは相手の怒りや戸惑い、あるいは逆に何かを隠しているといった不穏な雰囲気かもしれない。

会話の公準とそこからの逸脱という枠組みを通じて、グライスは、我々のコミュニケーションにおける複雑な含意の表現が効果を持つ仕組みを解明したのである。

この考えに基本的に同意しつつ、四つの公準は結局「関連性」(relevance)の原理にまとめられると主張したのが、スペルベル(D.Sperber)とウィルソン(D.Wilson)である。

聞き手は何か発話を聞くとその意味を探るが、それが文脈に沿ったもの(関連性がもともとあるもの)であれば、その意味理解にそれほど時間はかからない。しかし内容が、一見会話の文脈から離れていると、その(裏の)意味は何かという処理コストがかかる。時間をかければかけるほど、その発話のニュアンス(含意)の深読みはできるが、その分コストも増える。会話の理解とはこの二つの間の収支バランスで決まるというわけである。

これらの議論は、会話の複雑なニュアンスを我々がどう理解するか、という点について興味深い枠組みを提供しているが、実は両者とも一つの大前提がある。つまり、会話の表面的意味だけ追っても、よく分からない場合があり、その際我々は、その表面の裏に、話者の何か隠れた「意図」のようなものを探る、という前提である。特にスペルベルたちは、こうした傾向性を我々の生得的能力であると考えている。

※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の抜粋です(この記事の全文を読む)。
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