Updated by 中村 航 on September 10, 2025, 06:30 am JST
中村 航 wataru_nakamura
1985年生まれ。福岡県福岡市出身。翻訳者。テクノロジーやファッション、伝統工芸、通信、ゲームなどの分野の翻訳・校正に携わる。WirelessWire Newsでは、主に5G、セキュリティ、DXなどの話題に関連する海外ニュースの収集や記事執筆を担当。趣味は海外旅行とボードゲーム。最近はMリーグとAmong Usに熱中。
AIの利便性が高まる一方で、「倫理的な問題はないか」、「地域や社会に本当に役立っているのか」といった疑問も広がりつつある。オーストラリアの研究チームが先ごろ、社会や倫理への配慮を伴った「責任ある実用志向のAI」を提案する新たなポジションペーパーをarXivでリリースした。
オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)※の研究員であるSara Hartman氏らによるこの論文は「RAD-AI(Responsible, Application-Driven AI)」という考え方を提案するもの。これは「社会の現場に合わせた、責任あるAI」のことで、具体的には
・技術者だけでなく法律や社会など多様な専門家や当事者を最初から巻き込み、人の視点から課題を理解するチームをつくること
・倫理面・法律面、地域の事情や社会的なルールを踏まえた方法を考えること
・小規模にスタートし、段階的に検証して広げていくこと
という三段階でAI研究を進めることを提案している。
このようなアプローチが広がれば、地域や業界ごとに異なる文化やルールにふさわしく、安全で受け入れられやすいAIの開発が可能になるかもしれない。医療や教育、行政など、社会に近い場所でAIが「安心して使える存在」になる大きな一歩となる可能性がある。
※ オーストラリアの国立研究機関。Wi-Fi技術の開発でも知られる。
参照
[2505.04104] Position: We Need Responsible, Application-Driven (RAD) AI Research
Sarah Hartman | OpenReview