クラウドの草分け的な企業として、営業支援アプリケーションなどをサービスとして提供しているセールスフォース・ドットコム。同社は4月8日、ニューヨークで開催したイベントで「Salesforce Chatter」と呼ばれる新サービスの詳細を発表しました。
同社CEOのマーク・ベニオフ氏は基調講演で、クラウドはいま「Cloud2」へ進化していると説明しています。これまでのクラウドは、パソコンからAmazonやGoogleなどのサービスを利用するものでしたが、Cloud2ではパソコンからの利用者の何倍もの人数がiPhoneなどのモバイルデバイスからネットへアクセスし、利用するアプリケーションもFacebookやYouTubeのようなソーシャルなアプリケーションが主役になるとしています。
このモバイルデバイスとソーシャルネットワークに対応したクラウドこそ、「Cloud2」だというのです。そしてセールスフォース・ドットコムが新しく発表したChatterは、このモバイルデバイスとソーシャルネットワークに対応した新しいサービスです。
Chatterの特徴をひとことで表せば、それは企業向けのTwitterといえるでしょう(ベニオフ氏はFacebookを例に出しましたが、日本ではあまりFacebookは知られていませんので...)。
Chatterには、利用者ごとにプロフィール画面が設定され、つぶやきを配信でき、好きな人たちをフォローすることができます。フォローできるのは人だけでなく、価格表などのドキュメント、商談などもフォローでき、価格表が変更されれば価格表示自身が変更されたことをつぶやき、商談の内容が進展すれば、進展された内容を商談自身がつぶやきます。こうしたことで、利用者は社内でなにが起きているのかを知ることができるのです。
▼Chatterの画面
(セールスフォースが新しいビジョン「Cloud2」を披露。「Chatter」によるソーシャルとモバイル機能をデモ(後編) − Publickeyから転載)
TwitterがiPhoneなどのモバイルデバイスから気軽に利用できるのと同じように、Chatterもモバイルデバイスの小さな画面から簡単に参照し、つぶやくこともできます。
Chatterには国内でも注目を集めており、4月15日に東京で行われた同社のイベントでも、Chatterの説明を聞こうと1000人近い参加者が集まりました。
このように、企業向けのツイッター、いわゆるマイクロブログは大きな注目を集めています。そして、企業向けマイクロブログを開発しているのはセールスフォース・ドットコムだけではありません。
マイクロソフトは「OfficeTalk」と呼ばれる企業向けマイクロブログを開発中で、現在はプロトタイプを社内で試験運用中とのこと。また、IBMも「Project Vulcan」と呼ばれる企業内マイクロブログを開発中であることが明らかになっています。
マイクロブログに近いものとして、グーグルはすでに「Google Buzz」を公開しており、また「Google Wave」を開発中、そして業務アプリケーション大手のSAPも「StreamWork」(旧コード名「12sprints」)を開発中です。
これまで企業内の情報共有やコラボレーションといえばグループウェア、ドキュメントポータル、企業内サーチエンジンなどいくつかのトレンドがありましたが、これからはクラウドベースのマイクロブログがそれらを包括するソフトウェアになっていくのかもしれません。
文・新野淳一(ブログ「Publickey」 Blogger in Chief)
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