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ARMサーバに取り組むクラウドベンダーたち

2010.05.24

Updated by WirelessWire News編集部 on May 24, 2010, 10:40 am JST

数万台規模でサーバを稼働させている巨大なデータセンターを運営するクラウドベンダーにとって、最大のコストはいまやデータセンターの建設コストではなく電気料金だといわれています。

年間数億円ともいわれる電気料金を支払っているクラウドベンダーにとって、いかにデータセンター全体の電力消費を下げ、電力の利用効率を高めるかは重要な課題です。

そのためにいま、組み込み用途で使われていたARMプロセッサのサーバへの転用が注目されています。

ARMプロセッサ搭載サーバが稼働実験

ARM
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現在、クラウドベンダで使われているサーバのほとんどすべてはインテル製のCPUです。しかし、より低消費電力かつ電力効率の高いサーバを求めて、組み込みなどの用途に使われているARMプロセッサをサーバ用途に使おうという動きが目立ってきました。

EE Times Japanの5月6日付けの記事「ARMプロセッサ搭載サーバーが、英ARM社のウェブ・サイトで稼働中」では、表題のとおりARMが自社用Webサイト用にARMプロセッサを搭載したWebサーバを、実用化のための試験としてすでに9カ月も稼働させていると報じています。

ARMプロセッサを使うことで低消費電力を実現し、低発熱を特徴としているため、IAサーバよりもずっと高密度でサーバを運用することが可能になりますし、データセンター内の冷房にかかる電力も節約できます。

Amazonクラウドの上級エンジニアであるJames Hamilton氏は、昨年12月にARMサーバへの期待をブログで表明しています。

2010年はARMベースの「マイクロスライスサーバ」がくる! とAmazonクラウドの大御所は語る - Publickey」から、Hamilton氏の主張を引用しましょう。

高価で高性能なサーバを仮想化によって分割して利用するよりも、安価で低性能なサーバをスケールアウトしたほうが、仮想化によるI/Oのオーバーヘッドが不要で、しかも価格性能比でも熱性能比でも優れている

EE Times Japanの記事によると、12カ月以内にARMサーバが市場に登場し、Amazonクラウドは有力な売り込み先の1つだろうと報じています。

マイクロソフトもグーグルも取り組み始めた?

マイクロソフトやグーグルもARMサーバに注目しているようです。同じくEE Times Japanの4月22日付けの記事「マイクロソフトがARMプロセッサ搭載サーバーを開発か、求人広告が暗示」では、マイクロソフトが「Bing Autopilot Hardware」開発チームで勤務するエンジニアを募集しており、それはARMサーバに関する仕事ではないかとの予想記事を掲載しています。

また、グーグルはアップルの「Apple A4」プロセッサの設計に携わったエンジニアたちで構成されたプロセッサ設計企業「Agnilux」を買収したのは、ARMサーバの開発を目的としているのではないか、とも予想されています(「iPad開発チームが参加する Agnilux社をグーグルが買収、ARM採用サーバーの開発が目的か」EE Times Japan 4月23日)。

グーグルほどの規模なら、自社製のARMサーバを開発してもメリットがあるのかもしれません。

文・新野淳一(ブログ「Publickey」 Blogger in Chief)

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