──ちょっと(今回の特集のテーマからは離れた)余談に近いんですが、やはりiPadの登場でKindleは売れなくなりますか。
林 : そう思います。アメリカで売れてるって言いますけど、今アメリカでKindleを買ってる人って、ものすごく本を読む人達なんですね。以前に見た電通総研の調査によれば、アメリカ人が1年に買う本の数が平均14.2冊なのに対して、Kindle購入者は、Kindleを買う前から年間39.1冊ぐらいは買っていた。
アメリカの本って高いんですよ。1冊30ドルぐらいするんです。それが、Kindleで買うと9ドル99セントで買えていたんです。だから、そういう本の虫の人達がわっと飛びついて、ばんばん欲しい本をおとな買いしていたのが昨年末の状況だったんじゃないかと思っています。
それが、iPadが出てきて、本の価格を出版社が自由にしてもいいと言ったから、出版社がamazonに対して「本の価格を自由にさせてくれないとiPadに行くぞ」と脅した。そして結局アマゾンが折れて、本の値段が上がりました。
本の値段が上がったということは買える本も少なくなってしまうということですよね。ここからがKindleの正念場になると思いますが、成長は停滞すると思いますよ。
──でも、iPadって、長時間見ていたら疲れませんか?電子ペーパーと比べると、読むには向いていない気がするのですが。
林 : 本当の本マニアの人は電子ペーパーじゃないとやっぱりだめ、という人もいるかもしれませんね。私自身はそれほど長々と本を読まないということもあるし、疲れたらアプリケーションで明るさを調整できるので、あまり(疲れは)感じません。暗い部屋でちょっとまぶしいと思ったら暗くしたりできますから。実際、最近も自分の新著をまるまる1冊iPadで校正しました。
だいたいね、電子ペーパーが目にいいのかといえばそんなことはありません。より目に悪くないだけの話なんです。紙の本だって、子供の頃「本ばかり読んでたら目が悪くなるよ」って親に言われてませんでしたか?(笑)それと同じことじゃないかと思いますよ。
文:林 信行
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