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モバイル・アプリケーション市場に色気をみせる携帯通信事業者の思惑

2010.05.07

Updated by WirelessWire News編集部 on May 7, 2010, 21:00 pm JST

世界各国の携帯通信キャリアがつくる業界団体、ホールセール・アプリケーションズ・コミュニティ(Wholesale Applications Community:WAC)が、アップル(Apple)のiPhoneやグーグル(Google)のAndroidなど、携帯端末ごとに乱立し始めたモバイル・アプリケーションの流通のあり方に一石を投じようとしている。

2010年2月の発足時に24社だったWACの参加企業は、現在29社まで増加。米AT&T、仏オレンジ(Orange)、独ドイツテレコム(Deutsche Telekom)、スペインのテレフォニカ(Telefonica)、英ボーダフォン(Vodafone)などが参加し、日本からもNTTドコモやソフトバンクが名前を連ねている。

モバイル・アプリケーション関連では現在、Open Mobile Terminal Platform(OMTP)のBONDIという要求仕様、Joint Innovation Lab(JIL)のモバイル用ウィジェット開発、GSMアソシエーション(GSMA)のOneAPIプログラムといった複数の「標準」が乱立状態にあるが、WACではこれらに立脚した単一の標準を作ることで、アプリケーション開発者に寄与することを活動目的のひとつとして掲げている。

ただし、Light Readingの記事が指摘しているように、WAC参加企業の本当の狙いは、結局のところ「レベニューシェア」に基づく「ビジネスモデル」を確立し、携帯通信キャリア各社がアプリケーション流通に食い込んでしっかり稼ぐというものだろう。いずれのキャリアも、今後定額制でブロードバンド化が進むと、設備投資が増大して収入は頭打ちとなり、固定系インターネット接続事業者の轍を踏むことにもなりかねない。そこで、各社がARPUを上げるために、国境を越えて手を握ったというのが本当のところと思える。

現在スマートフォンの利用者は、たとえばiPhone用のアプリケーションが欲しければiTunesのApp Storeへ、Android用アプリケーションならAndroid Marketへ、ドコモのT-01A(Windows Mobile)用フリーウェアならばT-01Aへと、自分の利用する機器に応じて異なるアプリケーションやコンテンツを入手できるサイトを利用する。ただし、これは通信キャリア側からすれば「縦割り」で「不都合」な状況であり、市場のあり方に「改善」の余地があると映る。また、携帯端末ごとのwalled gardenではなく、キャリア横断のアプリケーション市場ができれば、それだけアプリケーション開発者の負担も減り同時に利益を得る機会も増大するとの可能性も考えられる。

もっともスマートフォンの利用者増大に伴って成長が見込まれるこの分野には、多くのプレーヤーが参入し競争が激化しそうな兆しも見られる。たとえば、通信機器ベンダーの仏アルカテル・ルーセント(Alcatel Lucent)は先頃、アプリケーション開発者と通信キャリアの間に立つブローカー事業に参入する意向を明らかにし、またスウェーデンのエリクソン(Ericsson)も「eStore」というアプリケーション提供サービスを始めている。

WACの取り組みは、一見すると開発者、通信キャリア、エンドユーザの三方一両得に見えるものだが、今後の展開によっては、複数のプラットフォームに特徴のないアプリケーションが平板に並んでいる状況を招きかねない可能性もある。

【参照情報】
Mobile Operators Strike Back on Apps (Light Reading Mobile)
アルカテル・ルーセント、モバイル広告分野に進出へ - 流動化する業界の境界線 (Wireless Wire News)

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